相変わらず、綺麗な色をしている。
俺は女のそこから目が離せない。
花弁の、襞の一枚まで目に焼き付ける。
「お前が、触れよ......」
嘆願するように佐々木翠が囁いた。
「俺が達する所が見たいんだろ?お前が俺をイかせてみろよ。それとも何か?自信が無いとか?」
女は挑戦するように俺を見てニヤリと笑う。
俺はあそこから目を上げ、女の目を見て微笑み返す。
やはり、馬鹿では無いらしい。
俺の煽り方を知っているようだ。
「そうだな。お前が男でイク姿を...『俺』で達する姿を見せてもらおうか?」
俺は作戦を変更して、女の花園に手を伸ばす。
「今回は、目隠し無しだ」
俺が親指で芽を擦ると、ビクっと佐々木翠の体が震える。
「足をもっと広げろ」
女は命令に従った。
俺は腹ばいになって女の脚の間に顔を埋める。
舌で花園全体を舐め上げる。
「キモチが良いだろう?」
俺は、わざと声に出す。
男に、俺に抱かれるのだとこの女に知らしめる為に。
「キモチわりい」
女が憎まれ口を叩く。
「ほお。ここもか?」
俺は舌先で芽を突付く。
「......っ。余計、キモイ」
「お前の言葉に反して体は素直に反応しているようだが?」
その芽を吸ったり、舌で転がしたり、突付いたりして女を焦らす。
尻の筋肉を僅かに硬直させたり、平静そうに装っているが息を時たま飲んでいる。
「ここが、潤み始めているぞ」
俺は指を1本女の入り口に突き刺す。
ビクッと大きく女の体が跳ねる。
フッと俺は笑みを浮かべる。
「生理的現象だろ......お前の為に、女の体を思い浮かべて妄想してやってる」
「そうか。なら、これを舐めろ」
俺は指をかき回して蜜を掬い取り、女の口元に持っていく。
女は糸の引いた俺の指を暫く見つめ、無言で舐めとる。
なかなか、良い眺めだ。
「お前が俺に感じている証だ」
俺は、再び女の中に指を浸す。
舌と指との攻撃で、女の中がどんどんと潤み始める。
そろそろかな、という所で俺は体を起こした。
女を弄りながら、俺の男も欲望を感じ熱くなっていた。
素早くゴムを着けると、俺は女の膝を抱え己の男を掴んで入り口に擦り付ける。
上から女を眺めた。
予想に反し、佐々木翠は俺を薄い瞳で真っ直ぐに見つめていた。
「俺が欲しいか?」
先端を浅く入れながら、俺は問いかける。
「欲しくねえよっ」
女は即答する。
「残念な事に、ここは俺を欲している」
俺は3分の1ほど中に埋める。
女の中は、熱くてきつい。
一気に貫きたくなる衝動を抑える。
「......んっ」
佐々木翠が唇を引き結ぶ。
「中に、入っているぞ」
俺は徐々に腰を動かし中に進んでいく。
全部、入れきった。
「どうだ?俺に抱かれている感想は?」
俺に満たされている佐々木翠がキュッと中を締める。
「どうもこうもねえよ......ああっ」
俺は腰を動かした。
減らず口を叩く余裕など、無くしてやる。
俺は何度も出し入れを繰り返しながら、その繋がれた部分を見やりながら、腰を振る。
女の中は濡れてはいるが、なかなか果てる気配が無い。
口を引き結んだまま、俺の顔を熟視して耐えている。
なかなかの忍耐だな。
または、俺に興味が皆無という事か。
俺はフッと鼻で笑う。
一段と、女を突く速度を速めた。
角度を変えたり、女の両足を真っ直ぐ垂直に掲げたりして体位を微妙に変えて攻める。
一体どのくらいの間俺は腰を動かしていただろうか。
何度も突く位置や速度を変え、女のスポットを探り続けた。
が、女が突然
「.........くっ......ああ!」
と声を上げた。
大きく体が仰け反る。
思わず、俺の口から安堵の吐息が漏れた。
と、同時に長い時間我慢していたモノから開放され、ゴムの中に溜まったものを一気に吐き出す。
俺は再び勝利に酔いしれ、女の体の上に崩れ落ちた。
「鷹男さ、あんた何のスポーツやってた?」
佐々木翠は行為の後、身支度しながら俺に訊ねる。
俺は裸でベッドの上に横たわったまま帳越しに女を見た。
「ハンマー投げだ」
「だと思った。その筋肉は、重量挙げとかそっち系だよな」
俺は黙って女を見つめる。
「筋肉増強剤とか使ってたのか?」
「合法のやつをな。何だ、俺のナニはステロイド使っているように見えるのか?そんなに小さいか?」
俺はふざけた口調で返す。
「ちっげーよっ!!俺よく男のアレは知らねえけど、デカイ方なんじゃねえの?わかんねえ。ただ、その筋肉は、普通に運動してたら手に入んねーよな」
着ていた物を再び身に付けると、腕を組んで帳の向こうの俺を眺める。
「なんでハンマー投げ止めたんだ?」
「肘をおかしくした。怪我さえなければ、今も続けていただろうな」
俺はゴロリと転がり、帳の垂れ下がっている天井を眺める。
佐々木翠は
「そっか。......俺、お前のこと、ちょっとだけ今日解った気がした」
と言い残して、俺の家を後にした。
俺はふと意識を戻す。
今日は何曜日だ?
卓上カレンダーを見る。
ああ、まだ月曜か。
あれから、女の月のものや出張などの理由が無い限り、俺は金曜の夜佐々木翠を抱いていた。
相変わらず反応の悪い人形を抱いているような気もするが、その分女が反応を示したり新たな発見があると、毎回何かしらのチャレンジや達成感を感じる。
佐々木翠との情事を思い出し、俺のスーツの下の男が硬く張った。
俺は携帯を手に取り、友利子に電話をかける。
銀座でホステスをしている、俺の馴染みの女。
女との約束を今夜とりつけ、俺は再びデスク作業に戻る。
暫くして、コンコン、とドアをノックする音がした。
予約も無しに秘書がこの部屋に通すのは、即ち門田家の誰か。
「入るよ」
案の定、俺の良く知った声がドアの向こうから聞こえ、俺が許可を降ろす前にガチャリと開く。
松葉杖をついた弟、紅が入ってきた。
俺は読んでいたメールから目を逸らし、部屋を横切りソファの上に凭れる紅を見る。
顔色は、良い。
170前後の細身の背丈で顔もきれいに整った紅は、障害を持っているというハンデを差し引いても色めいた輝きを放っていて、女と見まごうルックスは日本人の女からはかなり好評のようだ。
同じ中性的でも、佐々木翠が太陽とすれば紅は月のようなものだ。
父親が囲った女から産まれた、10歳も年下の俺と腹違いの弟の紅を、俺は彼が8歳の時、母親が亡くなり本家に引き取られて以来、息子のように育てた。
「親父と連絡取ってる?」
「さあ...。最後に話したときはタイに居ると言っていたが」
「それって3週間前?」
「1ヶ月前だ」
「ふうん」
「あの、ちょっと話があってさ」
紅は真面目な顔つきで俺の目を射る。
「佐々木翠の事なんだけど」
「ほう?トレーニングが不満なのか」
俺はおどけた顔をして弟を見返す。
「ううん。トレーニングはむしろ楽しいよ。そうじゃなくて、俺が知りたいのは...」
紅はそこで迷ったように言葉に詰まる。
が、残りを一気に吐き出した。
「兄貴と翠が金曜の夜何してるかって事」
俺は口を引き結んだ。