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未年の朝 2-5    11.26.2007


 「おい、待て!」
後ろから一馬がついてくる。

走りながら、目頭が熱くなってきた。
泣きたくない。

あたしはお城の中の長い回廊を、ただもう闇雲に走った。


中学校の時以来の持久走ばりに、長い間走り続けたあたしは、
行き止まりだ!
と思ったところで、足がもつれて絡まった。
「うおっ!」
つるっつるに磨かれた床で体がスベリ、ツルンっと横倒れになる。

ひゃあぁぁぁぁ~~~~~っ!
転ぶ時って、全てがスローモーションになるっていうけど、ホントそう。

か、壁が目の前にぃぃぃぃぃ~~~~~。

ぶ、ぶ つ か る ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! !

と思ったら。


壁の下半分が、クルリと反転した。

そのままウ〇トラマンが空飛んでる時みたいなカッコで(←じゅわっち?)ずーーーーーって滑り台みたいな狭い通路を下に下がってく。

な、なにこれ?
とか思ってすぐに。
スポッ、と暗い滑り台から抜け出る。

「?!」
ドンッ。
て、顔から落ちた。

イテーーーーーーー!!
何?
何だったの、今の???
一馬は?
ここは??

キョロキョロしてるあたしの背後から、いきなり声がかかった。
「何だ。明日香か。俺のからくり部屋を見つけ出すとは、さすがだね」

は?
からくり?

どっかで聞いた、嫌~~な声だ。
恐る恐る、振り向く。
「まっ政輝!!うわああああああああああああああああ!!!

思わず、絶叫。
口がパクパクして、腰に力が入らない。

だって、だって、政輝は褌(ふんどし)ナッシングで、襦袢の前はだけさせて、見知らぬ男の人のお尻に、お尻に、政輝の$*#がイン!!

って、ぎゃあああああああ!!!!

%@#*ちゃってる男の人が、しどけない顔でこっちを振り返った。
「しししししし失礼しましたぁぁぁぁぁっ」
あたしはコッチコチに固まったまま、出入り口らしき襖を開ける。

ガンッ!!

と、またもや顔面直撃。
ストンッ、とその場にしりもちをつく。

てか、何で襖の先が壁なのさ!

「あははははは!!相変わらずお前は頭が足りないみたいだね。……もうよい。行け、太一」
「ですが、殿……」
「もうお前は用無しだ。行け!」
「ははっ」
太一、と呼ばれたあたしより年上のお兄さんは、ガサゴソと音を立て(多分服を着なおしてるんだろーけど)、あたしの開けた襖の隣の壁を、くるりと押して出て行った。

もちろん去り際、物凄い顔であたしをニラむのも忘れてなかったけど。
男の嫉妬って……怖っ。

「なっまさっだっなにっ…っ」
嗚呼!
何故かスタッカート気味な声しか出ない。
まだ今のショック(ダメージ5)から立ち直れないで居るあたしとは正反対の、涼しげな声が後ろからかかる。
「何をしてる?こっちへ来い」
いや、でも……腰が抜けたって言いますか……。
フツーはこう、手でも差し伸べて
「お嬢さん、お怪我はありませんでしたか?」
とかジェントルマン風に言う所っしょ?
それが「何をしてる?」かよ。

「あーーーーっもう!一体ここ何処……ひいぃぃぃぃ!!!!!」

忌々しげに立ち上がって振り返ったあたしの目に飛び込んできたもの。

そ、れ、は。

全裸で胡坐をかいて平然と座ってる政輝の姿。

「ちょっとあんたっ!デリカシーってもんが無いの?」
体はうっすらと汗ばんでる……って、あたし何見てんだ?
「でりかしい?南蛮の言葉か?」
「は・じ!!恥ってもんがないの、あんたは!」
「お前が俺の閨事を邪魔したんじゃないか」
手を畳の上について、政輝は無邪気な顔で答える。
つか、な~んでそんな笑顔なの。
「ちょうど良かった。俺の体を拭いてよ。そこに花紙と手拭いが置いてある」
政輝が指した先には、漆塗りのお盆が置いてあって、その上に何やら怪しげな小鉢が色々と置いてある。

「だ、ダメだよ!こ、これでも夫のいる身だしっ」
って、さっき思いっきり「夫」たる男の前で否定して逃げ出してきた、なんて口が裂けても言えない!

そういや一馬…まだあたしの事探してるのかな?
あの赤いの、あれは見るからにヒッキーだったし。
首やら腕やらあっちこっちにあった。

あ~~~~~~、むかつく!!

あいつ、ここで女とイチャイチャする時間があったの?
あたしが、あたしが………。
「おい、人の話を聞いているのか?」

ハッ。

あたしは目を上げて、政輝を見た。
って、まだ全裸だしっ。
「だ~か~ら~、出来ないっつの!さっさと自分で片付ける!!あんた、もしかして、自分のケツも人に拭かせてるとか??」
「ケツ?尻の事か?尻拭き女が居る」
「し、しりふき女ぁぁぁぁ~~~?」

あっきれた!
殿様のケツを拭く職業まであるなんて!!
あたしは懐紙のちょっと高そうなバージョンの花紙とやらを掴んで政輝に投げつけた。
「お前、今のは打ち首に値するぞ」
「はいはい。そーやってすぐ人を脅迫する。あたし、この間言ったよね?人の上に立つ………」
人の上に立って民を指導する者が、その柱となる民衆の命を大切にしないなんて、冗談じゃ済まされない。いつか天罰が起きる……とか何とか言っていた」
政輝は襦袢を着なおしながら、あたしを手で遮って復唱した。

お…覚えてるじゃん。
ちゃんと。
てか、着物だって自分で着れるじゃないの。

「明日は銀山へ行ってもらう。絣と一緒に父上の従者と偽れ。それまで部屋で大人しくして……」
「謹んで、お断り申し上げまする」

へ?!

政輝は思いっきり眉間にシワを寄せて、不快そうな顔をした。
「あ、あたし言ってないし!」
思わず手を振って否定する。

「一馬!」
さっきあたしが落っこちた抜け穴から、身軽に飛び降りて一馬が姿を現した。

「盗み聞きとは趣味が悪いね、天羽殿も。僕の護衛は何をしているんだか」
「あのような罠をしかけたのは、こいつとあわせない為であられるか、殿?」
一応膝をついて、頭を下に向けているけど、一馬の声は明らかに怒り気味だ。
「あったり前じゃないか。どうしてここが分かった?……面を上げていいよ」
一馬が頭を上げる。
この変態若殿の足元に転がってる花紙に視線をチラリとやって……。

ギロリ。

と鬼みたいな超おっかない顔であたしを睨んだ。

つか、違うって!
エロ本読んでる所を母親に見られた少年の気分になってるあたし……。

ひえ~~~~~~っ、こわいっ!

「あの、これっは、えーと、政輝が若い従者と色々してた時の……」
言い訳しようとするあたしの言葉を遮って、一馬は政輝に向き直る。
「何用かは存じ上げませぬが、我が妻ながらこやつは大変なうつけ者にございますゆえ、何卒ご容赦願いたい」
深々とあたしの為に政輝に頭を下げる、一馬。
「ああ、馬鹿なのは知っているよ。だけどここに来たのは君の奥方の意思、だよね」
奥方、って単語に正直面食らうあたし。
「何用であれ、若殿のお話はなかったことにしていただきたい」
「明日香が嫌だというのなら、俺も無理強いはしないよ。君はどうなの?」

うっ……。
突然、あたしにフリやがった。

う~ん、とあたしは考える。
ロペスとかサンチェスとかもう会っちゃった人も要るし、乗りかかった船だ。

ぶっちゃけ、この時代、一馬の奉公人(ってか、妻?)以外に自分で何が出来るか試してみたい……気もする。
ってか、その前にもう自分が居た時代に帰れないかもしれないし(←一馬と〇っちゃったし)。
「お前は、ここに残りたいのか?」
一馬が相変わらずおっかない顔であたしを睨む。

ひいいいっ!

「もう乗りかかった船だし、残りたい……かも

語尾が小さくなったのは、一馬のせい。
すんげー怖い顔のままなんだも~~~ん。

「ほらね」
政輝が腰に手を当てて、してやったり!って顔で微笑んだ。
「ならば、拙者の同行もお許し願いたい」
思いっきり不愉快そうな表情の一馬は、政輝にも負けない(偉そうな)毅然とした態度でそう言い切った。

つか……同行?
ついてくるの?

確かに一馬が居てくれたら心強い…かも、とか思いながら首を振る。
今も一馬の襟足から覗く、男らしい喉元についたヒッキーが気になるよ。

一馬…今まで、どこでなにしてたの?

「へえ。随分と奥方想いだね。それは、“夫”として“妻”が心配だから?」
「左様で御座います」
政輝の嫌味ったらしい声にも動じない一馬の力強い声が、このからくり部屋に響く。
暫く腕を組んで考えた後、政輝がはあーっと息を吐き出した。
「分かった。天下無敵の天羽一馬殿が居てくれたら、父上も喜ぶし、明日香を絣一人で守るよりは安全かもしれないね。せっかく面白そうな夜になりそうだったけれど、今夜のところは明日香を君に返してあげるよ。絣、居るのだろう?」
「はっ」
さっきのからくり仕掛けの壁から、絣さんは姿を現した。
黒…ってか、濃紺の忍者スタイルの絣さんは……前回初めて会ったときと同じく、うつむいたまま政輝の前に進み出る。
てか、絣さんあんた…あたしと政輝のやりとりも、その前の情事も全て聞いてたんスか。

いや~な、職業だわ。

「この二人を寝室にお連れしてあげて。ついでに、天羽殿にこの計画の全貌を説明しておいてね。俺はもう寝るけど……明日香、こっちに来て」
絣さんにそう告げると、政輝はあたしに向かっておいでおいでする。

あたしゃ~、犬か何かかい!

ちら、と一馬の顔を伺うと、不機嫌そうな表情のまま、小さく頷いてくれた。
「あたし、あんたより年上なんですけど」
一応年上の威厳を見せようと胸を張りながら、政輝に近寄る。

「あっ!」
がばっ、と。
突然、政輝に抱きしめられた。

ヲイヲイ!
一馬の前だよーーーーーーーーーっ!!!

「君の安全は保障するけど、くれぐれも気をつけてね」
耳元で小さく囁かれる。
ついでに、耳の穴にふっと息が吹きかけられた。
「どわああああああ~~~!!!何すんのよっ、変態バカ殿!」
零コンマ一秒で、政輝から飛びのく。
耳を抑えながら鳥肌立ちながら動揺しているあたしを見て、あははと政輝は笑っている。
「やはりお前は普通のおなごと違って面白いな。天羽殿、しっかり見張っておいた方がいいよ。でないと、どっかの誰かに取られちゃうかもしれないから」

政輝はそういい切ると、さっさと壁の隠し戸に姿を消していってしまった。



タイムリミット    11.27.2007
“タイムリミット”

「What the Fuck!!」

女の大声がダンスフロアに響いた。
アフロのウッキーこと、宇治木芳彦は
「ほえ?」
と間の抜けた声を出した。
女は通り過ぎようとしたウッキーの腕を掴んで睨んでいる。
『あんたあたしにぶつかっておいて謝りもしないの?』
その澄んだ声の持ち主は、褐色の肌に黒々としたロングのストレートのヘアをした、小生意気そうな黒人の女の子だった。


先ほど何者かにチョークスリーパーをかまされ、里美に逃げられ、そのままクラブのトイレの前で暫く眠っていたウッキーは、探しに来た仲間に起こされフラフラしながら彼らが陣取っているダンスフロアの目の前のテーブルに戻る途中であった。

が、嵐を巻き起こすのがこの男である。

力なくヨロヨロになって歩いていたせいか、飲み物を持って歩いていたこの少女にぶつかってしまったのだった。

『あんた、そんなアメリカナイズされた格好なのに英語も分からないの?』
少女はグラスの中身の大半を溢してしまったらしく、恨みがましくウッキーを睨んでいた。
「ちょっと、弁償しなさいよ。」
女の子はウッキーが英語を理解していないらしいと判断し、日本語に切り替えた。
「あぁ?」
ウッキーは少女が日本語で喋りだした途端、先ほどまで放心状態だったにも関わらず、
「テメーがぶつかってきたんだろ、ボケッ。」
と、でっかいアフロを整えながら突然方眉を上げて睨んだ。

情けない事に弱そうな者には限りなく強いのがこの男である。

が、その一言と共にパシャッと彼の顔面に水しぶきが上がった。
「あんた、口の利き方を習った方がいいわよ。シスター怒らせるとこわいんだからね。」
持っていたドリンクをこのアフロ男にぶっかけ、小柄ながら腰に手をあて、アーモンド形の瞳で睨みながら少女はウッキーなんぞに全然動じず啖呵を切った。



「おまえさあ~、ちょっと変なんじゃねぇの?」

ウッキーと一緒に来たクラブ仲間のボビー(日本人)は、翌日ウッキーから新たな恋の病に侵されていると聞かされ呆れていた。

「ドリンクぶっかけられて啖呵切られてハイヒールで思いっきり足踏まれて消えた女が気になるなんて、変わってるとしか言いようがねぇよ。前の里美といい、ちょっとお前Mの気があるんじゃね?」
「そんなことはねーよ。俺はぶりっ子とかは嫌いなんだよ。」

そういいながら櫛でアフロを梳いているウッキーは、ずっとあの褐色の少女の事が気になっていた。

あの夜、ウッキーに啖呵を切った彼女は一緒に来たらしき友人に
「やめなよ、ニベア。基地の外で問題起こすとまずいからこんな奴置いて行こうよっ。」
と、止められそのままクラブから姿を消した。
米軍基地の人たちも御用達のヒップホップを流す有名なクラブなので、シスターやブラザーはよく見かける。
なので毎週毎週イベントがあれば同じようなクラブに出現する可能性はあった。

が、またあの黒真珠(ブラックパール)ちゃんと会える可能性など万に一つあるか無いかだ。

所で。
このウッキー君なのだが、こんなこてこてのBボーイファッションでごっついアフロをしてはいるが、素顔は某有名大学の法科で真面目に勉強している、なかなか男前で健康な男子なのである。
だがしかーし、その「来るものを拒んで去るものを追う」アブノーマルな変態的性格と、本人しか気に入っていないでっかいアフロがネックとなっていて、女運に恵まれていないらしかった。


まあ、それはともかく。

ウッキー君の新たなターゲット探しはその日から始まった。
毎週末彼女と出合ったクラブに顔を出した。

彼はクラブの前で下手なイラスト付きでニベア用の尋ね人のビラまで配った(まあ、そこまでする辺が彼が普通の人と違う所なのだが)。

効果が何も無いと思いながら虚無的に一ヶ月過ごしていたある日の事。

幸運は突然やってきた。
例の彼女、ウッキーの夢の黒真珠ちゃんことニベアが彼の大学のある〇王子駅の雑踏の切符売り場に居たのである。

褐色の肌と長い黒い髪はその場の人間が全てぼやけて霞んでしまうほど美しい輝きに満ちていた(ウッキービジョン)。

「うおうっ!!マイブラックパールベイベー!!!運命だぜ!!!」
と、彼はスキップしながら改札口へ向かった。

案の定…というか、彼女はウッキーを一目見るととても嫌そうな顔をした。
「あんた…。」
〇王子で買い物をしていたらしく、彼女は買い物袋を幾つか下げていた。

「よう、俺達赤い糸で結ばれてるんだな。また会っちまったぜ。」
ウッキーはアフロをポリポリと掻きながら照れている。
「この前は悪かったな。俺別にお前に悪気があったわけじゃねーんだぜ。」
少女はふっくらとした唇を尖らせて眉根を寄せた。
「運命って……あんた幼稚園児が書いたみたいな、変な似顔絵付きのビラをクラブで配ってたでしょ??そのせいで友達からは笑われるわ、基地の中で顔が知れ渡っちゃうわで大迷惑してんだからねっ。」
「あ、わりぃ…。俺も必死だったんでよー。」
とのウッキーの言葉を聞いてか聞かずか。
プイっと顔を背け彼女はそのまま彼の横を通り改札口へ向かった。
ウッキーは無言でついてくる。
彼女が駅の構内で電車を待っていても、ずーっと後ろに立っていた。

「んもうっ、何?何で付いて来るの?あたしに何の用?あんたと話せばあたしを解放してくれんの?」
苛々の頂点に達したのか、彼女は向き直った。

「っつーか、話してーんだよなー。」
「……電車が来るまでだったらいいわよ。」
困惑気な表情をしているウッキーを見て溜息をつくと、彼女は近くにあったベンチに腰を下ろした。

「俺、ウッキー。宇治木芳彦ってんだけど。」
「ニベア。ニベア・真理子・ガーナー。」
自己紹介してきたウッキーに不精不精な声音でニベアは答える。
「んで?話って?」
さして興味もなさそうにニベアは驚いた表情のウッキーを促す。
「いや、日本語うめーなって思って。」
「名前聞いてなかったの?あたしのママは日本人だし。ずっと横田で生まれ育ったから。……あんた幾つ?」
「俺?23。」
不器用そうにウッキーは答える。

こういう普通の会話となると、実は外見に似合わず真面目になってしまうのだ。

「へえ~。あたしは17。今年の5月でハイスクールは卒業。」
大人びた色気のある肢体に喋り方だったので、自分と同い年くらいだと思っていたウッキーは、年齢を聞いて驚いたらしく眼を丸くしている。
「お前、まだ高校生だったのか?」
「お前って言わないで。あたしの事ニベアって呼ばなきゃ話さないから。」
ニベアは言いながら長い髪の毛をかきあげた。
「わ、わりぃー。ニベア。」
「よく出来ました♪」
ウッキーは横目でチロチロと隣のニベアを観察した。
クラブの薄暗い光の中では良く見えなかったが、こうして昼の太陽に照らされてみると思った以上に美少女である。
高めの頬骨と小さめな鼻は、彼女にアジア人の血が流れている証拠であった。

その頬を可愛らしく吊り上げてニコリとニベアは微笑んだ。
ウッキーはその姿が眩しくて目を細める。

もう、彼の頭の中では結婚を通り越し将来の明るい家族計画が進んでいた。
彼女に似た息子はきっとハンサムに違いないなどと勝手に妄想していると、構内に電車が来るとのアナウンスが流れた。

「はい、時間切れね。電車が来るわ。」
ニベアは持っていた手荷物を再び持って細身の体になだらかにラインを描く肉付きの良い腰を上げる。
それを見てウッキーは鼻血が出そうになった。
鼻を押さえているウッキーをニベアは顧みる。
ふっくらとしたグロスの輝く唇がウッキービジョンには100倍拡大されて映った。

いつか、キスしてみてぇ…。

「もし、私にまた会いたかったら、あのクラブに今週金曜日行ってあげてもいいわよ。ただし…。」
ニベアは、ぐわしッ、と乱暴にウッキーのアフロを掴む。
「お願いだから、うざったいこれ編むか何かしてね。その方が似合うと思うし。」
「お、おうっ。」
電車の中で手を振るニベアにつられて電車が通り過ぎるまで手を振っていたウッキーがその直後、知り合いのサロンに駆け込んでいったのは言うまでも無いだろう。

嵐を巻き起こす男が再び一騒動巻き起こしてくれそうであった。





あとがき:もっち、ニベアちゃんのモデルはクリ〇タル・ケイちゃんでしょう!OSEIお気に入りのキャラだったので…番外編書いてしまいました。
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