OSEIの駄文を読んでくださるだけでもありがたいのに、その上イラストまで描いてくださいました♪
まず第一弾!!
タロちんこと、山田太郎君
って、こんなにカッコよかったのね。
しかも、わんこマーク付き。
す、鋭い。ってか、読んでくださって、ありがとう(涙)
タロに会いに、
『WHAT A ○×○×!!』へGO
そして、第2弾!こちらはかなーり迷うんですよね。
何故か?
いやはや、白黒バージョンがあるんですよ。
夜眉さまの。
OSEIはね、何気に白いほうが好きなんです。
でも、黒のほうがイメージにあっているような。
皆様は、どっち?
黒バージョン
白バージョン
さて、『手白香の姫』であなたのイメージと照らし合わせて見て下さい!
『手白香の姫』へGO!
そして、第3弾は!
OSEIのキャラの中でもっとも愛すべき人物ですよ。
こんな人いたら、超玉の輿狙うんですけどね。
って、事で、この人ですよ。
超天然で、超ダサダサで、でも、キレイな男。
『超天然記念男』へGO!
JUNさま、素敵なイラスト、本当に有難うございました。
次はうちの娘共を描いてくださりませんかのう???
って、何気なくリクエスト?
……気まずい。
あたしと一馬は、一つしか敷かれていない布団の前に、向かい合って座っていた。
さっきのカラクリ部屋からずーーーーーーーーーーっと無視、シカトで仏頂面の一馬は、絣さんが寝室に案内して一通り説明をし終えると、とっととオイトマしてしまった。
「か、厠でも行こっかなぁぁぁ~~」
とそろそろと逃げ出そうとしたあたしを、普通より3オクターブくらい低い声で、
「話がある」
と一馬は呼び止めた。
びくぅぅぅっと振り返ると、腕を組んで胡坐をかいて、超眉間に皺寄せてメンチ切ってる(ってか、あたしにはメンチ切ってるようにみえた)。
っつか、二人だってのに、ロマンチックの欠片もないよ。
あたしは親に説教される子供のように肩を竦めてそろそろと向かいに正座する。
「視察団に紛れるとはいえ、お前は金鉱がどれほど危険な仕事か知っていて引き受けたのか?」
唸り声みたいな声のまま、一馬はお堅い表情一切変えずそうあたしに告げる。
危険?
危険なの?
デンジャラスなの?
あたしは頭をフリフリする。
はあぁぁーーーーーーっ、とイヤミったらしく一馬が呆れた溜息を吐く。
「鉱夫の殆どは元罪人か職にあぶれた両人の成り下がりだ。労働は過酷で、齢二十で働き始めた鉱夫は四十まで生きながらえん」
「…え………」
マジっすか。
って、言葉を失っているあたしを見て、また溜息をつきながら首を振る。
つまり、ハードコアな仕事の上、ハードコアな男共の集まりって事だよね。
えー、あのー、何か今更ながら怖くなってきたんですけど。
しかも、明日出発。
断っとけば良かった、なんて後悔先をたたず。
そーんなあたしをよそに、一馬は続ける。
「しかもお前が女と分かれば、いくら殿のご同行とはいえ、飢えた虎の中に兎を放り込むようなものだ。只では済まされぬぞ」
だーーーーーーーー!!!
もういいって!
レイプされちゃうんでしょ!!
今もんのすごぉぉぉぉーーーーく後悔してんだから、追い討ちかけないでよ!
「一馬も来るんでしょ?」
「当たり前だ」
自信なさそーに聞いたあたしに、一馬は間髪を空けずにぴしゃりと返す。
あ、ちこっと安心感。
「だが……」
あたしの目の前で腕組んでいる一馬は、すごみのきいた声で緩みそうになっていたあたしの気を引き締める。
「その南蛮人共の『手がかり』さえ掴んだら、とっとと江戸へ戻るぞ。よいな?」
あたしは、上下にあたまをフリフリする。
一馬は、一瞬顔を緩めて、また不快そうに眉間に皺をよせた。
「あの怪しげな小部屋で、お前は若殿と何をしておった?」
さっき以上に険しい声で、一馬はあたしを問い詰める。
「あれは、さっき言ったでしょ?一馬から逃げてたら転んで気づいたらあの部屋に来ちゃったの。そしたら、政輝が、その……太一って人と○×△してて……」
ジーーーーーーーーーーーーーーーーっと腕組んだ体勢のままあたしを伺っている。
こ、怖いっつの!!
朝帰りした娘の父親か、あんたは!
「ホントだってば!!絣さんも盗み聞きしてたから、聞いてごらんよ」
「忍びを生業としている男は、滅多な事では口を割らん。だが分かった。お前の言葉に偽りは無いようだが……若殿のお前に対する態度が気に入らん。隙を見せるのではない」
「見せてなんか居ないよ!自分だってさっきは……」
はっ、となって、一馬の首筋から胸元を見る。
うっすらと……。
「そ、そーーんなヒッキーまだくっつけて、へ、へ、変態!!種馬男!やりちん!!!!」
「種馬だと?」
「そうだよっ。腕にだって歯形がついてるじゃんっ」
一馬は袖を捲り上げて、腕をあたしにみせる。
「これの事か?」
「そうだよっっっ」
あたしは思いっきり嫌そうな顔をして、一馬のおっかない隻眼を半眼(ってか白目?)状態で睨み付けた。
「お前を探しにこの城に戻って来た。が、お前と会わせぬ為の若殿の策略であったのだろう。商売女のナリをしたくの一で時間稼ぎをさせられておった」
「そそそそそれでヤリたくてやっちゃったんでしょ?スケベ野郎!浮気者!!!」
浮気者?
思っても無い言葉が口をついて出たよ。
「最後まで、という意味ならば、案ずるな。途中で女の首の筋を外して逃れた。この歯形はそのときのものだ。それに……浮気者、と罵るのであれば、お前と殿はどうなのだ?」
「首の筋を外した??!女の人の?!?!?」
それ、女の人に暴力振るったって事?
明日香さん、暴力は反対だよ。
「相手は普通の女子(おなご)では無い。訓練されている、忍びだ」
「いやだからって、暴力はいけないでしょ?」
「少し眠らせただけだ。命に支障は無い。それより、俺の質問に答えておらんぞ」
うっ、鋭い。
話題逸らしたの、バレた。
「政輝が何考えてるかなんて、知らないよ。こっちだって、迷惑してんだから。あたしはただ……」
だって、元居た時代へ帰る方法が分かんないから……。
突然立ち上がった一馬はあたしの横に立って、ぽんっと手をあたしの頭に置いた。
「帰る方法なら、俺も一緒に探してやろう。何か他に方法があるかもしれん」
「……うん」
一馬の声が、さっきよりちょっぴり優しい響きを帯びた。
どれ位たったんだろ。
いや、多分数秒だと思うけど。
突然、このだだっ広い部屋の中の、目の前の一組の布団が気になりだした。
「…………」
気まず~い、沈黙。
「あー、えーと、一馬、床で寝てよ。布団はあたしが使うから」
早いもん勝ち!と言わんばかりにあたしは布団の横を陣取った。
一馬は、フンッと鼻を鳴らした。
「悪いが、俺も長旅で疲れておる。江戸からここまでろくに休みもせず来た。それに、この城では夫婦(めおと)で通しておるのを忘れたか」
えっえっえっ??
って感じで一馬に押し倒される。
あっという間に、組み伏せられていた。
「なっ…やめてよ!花町の女の方がいいんでしょ?」
「今宵は、お前でも良い。それに、もう一度試してみようとは、思わんのか?お前の時代とやらに、帰れるかもしれんぞ」
う。
やっても駄目だろうってのは予測がついてるのに。
拒否すべきなのに、身体が一馬を欲しがってる。
お腹に押し付けられた一馬の分身が、どんどんと大きくなってる。
あたしの熱も、下肢に集中し出しちゃってるし…。
「お前は、これが欲しくないのか?…あの花火の夜、お前も楽しんでおったではないか?」
目と鼻の先の、一馬の熱い息を肌に感じる。
「い……痛くしないでよ?」
あたしは、真っ赤になった顔を横に逸らして、言い返した。
つか、ヤリたい。ヤッてください、って肯定してるようなもんじゃん。
最悪だよ。あたし。
「当たり前だ……」
耳元で低くつぶやくと、一馬があたしの首筋に顔を埋めた。
帯を解くのにそれ程時間はかからなかった。
あたしに激しくキスしながら、器用に片手で結び目という結び目を探り当てられて、解かれる。
あっという間に、合わせを広げられて、襦袢も取り去られた。
「えーと、灯り消して頂けると有難いんですけどーーー」
一馬の前で裸になったのが急に恥ずかしくて、今までそんなに明るいと感じなかった灯りが気になりだした。
「俺は、構わん」
一馬は言いながら、身体を離してあたしをじっと見つめた。
宇田川と、目が合った。
と、思ったら、ただのポスターだった。
2階の休憩室の販売機で何気なく頼まれもの(ただのパシリって噂)のコーヒーを買っていたら、隣に貼ってある今期のBREEZEのポスターが目に入った。
この間までは、ここには誰か陸上選手のシューズのポスターが貼ってあったような。
てか、うろ覚え。
今までぜんっぜん興味とかなかったのに、初めて被写体を通した宇田川をまじまじと目にした。
バスケウェアの広告用のそのポスターの中の宇田川は、真剣な顔でドリブルしてたり、シュート決めてる。
しかも2つのバージョンが、隣同士に貼ってある。
これは明らかに門田さんじゃなくて、他の人が撮影したものだ。
門田さんはこういうパッションとか男臭さを出す写真は撮らない。
なんて言うか……宇田川の、滅多に見れない真剣な瞳が印象的。
思わず通行人も振り返りそうな、熱いまなざし。
現にあたしも、通り過ぎそうになって、立ち止まった。
やっぱ、黙ってれば全然パンピーとは違うわ。
存在感が、違う。
目が、離せない。
見つめながら、こんなにパーフェクトに見えるのに、何気に下半身問題抱えてるんだよね~とか考えてしまう。
あたしと、もう一人の元彼女しかしらない、事実。
健人もそうだけど、やっぱ神様は皆平等にしてくれてるのかな。
ああ、健人……。
今朝から。
いや、昨日健人が出てった後からずーっと健人の事考えてた。
ご飯ちゃんと食べてるのかな、とか今日は家に帰ってくるのかな、とか。
いや。
一番パンチ効いた言葉を思い出す。
「原因に解決策、かぁ……」
はっきり言うと、「原因」には心当たりがある。
だって、宇田川と関係あった直後から健人と脳内会話出来なくなったから。
でも、「解決策」は、わからない。
どうすれば、いいんだろ?
ぶっちゃけずーーーっと感じてる「寂しさ」や「物足りなさ」の意味が分かった気がした。
あたしも、健人の「声」が。
「心の声」が聞きたいんだ。
♪♪ユアマイベイべ~、プレシャスガ~ル♪♪
と、突然超陽気な音楽が流れて、ボーっと考え事してたあたしを現実に引き戻した。
超、タイミング。
こ~~~んな丁度ポスター見つめてる時に限って、こいつかよ。
はあ。呪われてるかも、あたし。
今日は4回着信+3回メールが入ってた。
ずぇぇぇl~~~んぶシカト。
いや、だって仕事中だったし。
はあ~~~~っとため息ついて、仕方なく携帯を取り出す。
「よっ。なにしてんの?」
「一体全体何っっ回電話かけてんのよ!!めーわくこの上…」
「やっぱ土曜日集合時間午後に変更!俺様、ロケが朝方に変更になっちまった。悲しむな。俺に会えないわけじゃねーから」
相変わらず人の話聞いてねーよ(涙)。
それより、この目の前のポスターの人物と会話してるんですけど。
あまりのギャップに、あたしは思わずまじまじと見つめてしまう。
嗚呼、宇田川らしーってか、俺様的っていうか、なんて言うか。
「ふうん。じゃあ、何時?」
「おっ?今日はやけに乗り気じゃね?そろそろ、宇田川様の男の色気ムンムンフェロモンにやられ…」
「てないから!今すぐ仕事戻んなきゃなんないし。んで、何時なの?」
「ひどいわあなた!男が出来たのね!!」
「…うざい。まじで何時?」
ああああ、血管切れそう。
あたしの声のトーンに気づいたのか、宇田川は小さくため息をついて
「生理前ですか?おおこわっっ。とりあえず、3時な。遅れんなよ? くりすちゃんも俺も忙しいんだからな?場所覚えてっか?」
と早口で言う。
「覚えてるよ。ヒルズの映画館前でしょ?マジで会えるんでしょうね?クリスチャン・〇ールに。ってか、面白いんでしょうね~、ターミ〇ーター」
「宇田川さん、ウソつかな~~い」
「すんげ~、ウソくさっ」
再度チラっと宇田川のポスターを見る。
おんなじ人間だとはぜーーーーんぜん思えない。
いっつもおちゃらけてて、阿呆な事ばっか言ってて、*#%短小で……って、おっと~。
「じゃ、愛理仕事頑張れよ」
と、思ったら、いきなり声のトーンが激真面目になった。
いいかげん、止めて欲しい。
宇田川の、突然予期せぬ時に来る、「マジモード」
「お…おう。宇田川もね」
一瞬怯んで、そう宇田川に告げる。
「アナタ浮気、ワタシ、許さなーいっ。デモ次会えるたのしみヨ♪」
と外国人パブのお姉さんみたいな声音でチャラチャラモードに戻った宇田川は、笑いながら電話を切った。
「ったく、宇田川は相変わらずで…って、うわあ!!!」
一息ついて顔上げたら、もんのすごいどアップで、きれいな顔が……。
今日は午前中、この目前の美人さんの撮影を手伝っていた。
そうでなくても彼女はこの社の地下の社員ジムを愛用している。
どういう経緯で部外者の彼女が(BREEZEのモデルをしてくださってるとは言え)ここのジムを利用しているのかは、あたしもいまだ持って理由は知らない。
まあ、門田さんと門田社長繋がりなのかもしんないけど。
ので、仕事絡みでなくとも彼女はこの会社によく出入りしている。
顔をよく見かけるし、誰とでも分け隔てなく仲良くなれる明るい性格が手伝ってか、社員全員知ってるんじゃないかって位、彼女は顔が広い。
「翠さん。門田さんなら今オフィスで修正作業してますよ。あ、それとも社員ジム行かれる途中だったとか……?」
「まじで???」
「へ?」
いや、そんな顔近づけられても……。
「だから、クリスチャンに会えんの?」
「へ?」
って、間抜けな声しか出してないし。
「朝倉さん、クリスチャン〇ールに会えるの?」
「あ、ああ…」
電話聞いてたんですね、翠さん。
「あ、はい。あの…友達がたまたま新作の映画券持ってて、なんか関係者らしくて、会えることに……」
「行っていい!!!!???!!!??!!」
き~~~~~~~んっ。
って、今耳の鼓膜が一瞬破けそ……。
「ってか、俺も行っていい?!」
すっごい耳元で、叫ばれた。
何メガヘルツなんだ、この音量は。
翠さんは、物凄く興奮してるらしく、綺麗なグレーの瞳をキラキラ輝かしながら、ついでにあたしの両肩を掴んで揺さぶる。
「いや~あの~翠さん~落ち着いて~~……」
ガクガク前後に身体を揺さぶられてるあたしは、かろうじて〇輪明宏様のようなフニャフニャな揺れた声を出せた。
ハッとなった翠さんが、慌てて手を離す。
「悪ぃ。盗み聞きとかフツーしねーんだけど、ちょっと耳に入っちまって。ってか、マジコーフンしたっ。つか、大丈夫朝倉さん?」
「ええ、大丈夫です」
体はね。
でも…。
「いや、今だけじゃなくってさ。朝倉さん、今日朝からずっと眉間に深いふか~い皺寄ってるんだけど。トイレ我慢してるんだったら、律儀に紅のお使いなんてしてないで、さっさと便所行って搾り出してきな」
搾り出してきなよって。
「大と小どっち?」
「いや、別にトイレ行きたいんじゃないんですけど」
「ふーん。じゃあ、なんでさっきっからしかめっ面してんの?」
よいしょ、と撮影用のジャージ姿の翠さんは、販売機の横のベンチに腰を下ろす。
姿形はスーパーモデルそのものなのに、声音と物腰と仕草が思いっきり長与〇種に見えるのは、あたしだけ?
「俺も行っていい?ってか、いっしょーーーーのお願い!クリスチャン〇ールに会わせてくんない?」
でも、意外。
翠さんも、クリスチャン〇ールみたいな男の人が好み……。
「俺、バッ〇マンみてーな身体になるために、今猛烈に鍛えてんだよね。いや~~、バット〇ンスーツ、小さい頃からの憧れだったんだよな。あの黒光りしたスーツ、筋肉ねーと着れねーしなー」
は?
「筋肉増強剤使ってたら、事務所に見つかって大変でよー。お前はプロレスラーになりたいのか!ってすんげー怒られた。だから今はふつーに筋トレしかしてねーんだけど」
あ、いや、好きっていうより、これは……憧れ?
何か間違ってないか?
「あー、えーと、友達に聞いてみないといけないんですよね」
「え?もしかして、デートの約束とかだった?彼氏?」
「はあ?いえ。ぜんっっっぜん違いますけど!」
首と手をブンブンと振る。
ああ、不必要なくらい、西洋人ばりにオーバーアクションで否定しちゃった。
翠さんの瞳がさらにキラリと光る。
「でも、映画関係者なんだ?」
「うーん、ていうか、確か広報担当してるとか言ってましたね。あの、この人なんですけど」
あたしは、目の前のポスターの人物を指差す。
「あー、宇田川光洋!そういえば、こいつがピ〇コと一緒に映画の宣伝してんのワイドショーかなんかのニュースで観た観た。このアイドル、BREEZEのモデルもやってんだ」
翠さん……ワイドショー観るんですか。
庶民的なんですね。
「はい。それで知り合いになったんです」
っていうか、とあるアクシデント以来しつこく恐喝されながら今に至ってます、みたいな。
「あー良かった。BREEZE関係者に嫌な奴いねーしな。なら、俺行っても平気だろ?ラッキー♪ってか、いつ?」
いや、勝手に決め付けられても…。
「えーと、土曜日の3時です」
嗚呼、律儀に答えてる嘘のつけない小心者超日本人のあたし(泣)
「うわ!マジ奇遇。ってか、超たまたま俺その日オフなんすけど。すんげー偶然じゃねーか?」
そう言うと、翠さんはニヤッて悪戯っ子みたいな笑みをあたしに発する。
はうっ。
あまりに眩しい美人ビームにブスなあたしは怯んだ。
HPダメージ20。
目薬がぁぁぁぁぁ!
「じゃ、そのコーヒー、ジム行く前に俺が紅に持ってくよ。ちゃんとションベン最後の一滴まで搾り出しとけよ?じゃーな!」
ルンルン気分の翠さん(注:あたしはまだ了解を得ても出してもいない)は、あたしの手からさっとコーヒーを取り上げるとスキップしながら廊下に消えていった。
あー、想像以上だ。
あたしを見つけた宇田川は、満面の笑顔になり、その後あたしの隣を見て「は?」って顔したあと、状況を判断したらしく思いっきり嫌そうに眉根を寄せた。
見事な表情3変化!
今日も深々と野球帽被って地味~~~な格好の宇田川は、一応あたしの横の門田さん(翠さん曰く勝手についてきた)に会釈して初めて会った翠さんに自己紹介してから、あたしの袖を引いて少しはなれた所に張り付いたような「笑顔」で無理やり連れて行った。
「ふざげんなごら゛ぁぁぁぁ!!!!!」
「いた!!!」
ゴンって帽子のツバで思いっきりヘディングされた。
「ごめん。だって翠さんもクリスチャンに会いたいって…大ファンらしくて断れなくて」
「断れ!お忍びデートだってーのに、あんな目立つ奴ら連れて来る馬鹿いるか!俺様が地味~に変装してる意味ねーだろ?」
食いしばった歯の間から宇多川は苦々しく声を漏らす。
眼鏡の奥の瞳は……にらめ過ぎてめっちゃ白目だ。
でもそう言えば…。
あたしは後ろの二人を振り返った。
確かに…通行人は皆あの二人に注目してる。
二人ともハーフって容姿だけでも目立つ。
翠さんはバリバリモデルオーラ発揮しまくってる。もう一目で芸能人。
門田さんもこれと言って目立つ格好じゃないのに松葉杖だからか、翠さんと一緒に居るのも手伝って、目が行ってしまう。
二人とも、目立つ事この上ない。
「ごめん…」
何も考えてなかった自分に、ちょっと自己嫌悪。
宇田川が忌々しそうに舌を鳴らす。
「まあ、ダブルデートっぽくて良くない?」
「良くねえよ!つか目立つからさっさと映画館の中入んぞ」
宇田川は周りをキョロキョロしてから、あたしの腕を掴んで引きずるように劇場内に連れて行った。
「最高だぜ!クリスチャン!」
「んー、まあまあかな」
映画上映中ずっと黙り込んで不機嫌だった宇田川を除いたあたしたちは、劇場から出ながら3人3様の感想を述べた。
「つか、何であのアイドル先歩いてんの?」
翠さんが数歩先の宇田川を顎で示す。
「目立たないようにしてるんでしょ?」
門田さんは相変わらず眠そうに返事する。
「ああ、あれ、変装か?誰もアイドルって気づいてねーし、全然目立ってねーじゃん」
いや、目立ってるのは宇田川じゃなくって、あなた達なんですけど。
心の中で突っ込んでると、ポケットに手を突っ込んでうつむきながら歩いていた宇田川が突然立ち止まって振り返る。
「おう、愛理、次、どこ行く?週末空いてる不動産屋知ってっけど、あんたのアパート探しでもすっか?」
「アパート探し…?別に今……」
「てかさ、いつ会えんの?」
あたしの声を掻き消して翠さんが聞き返す。
ああ、そういえば。
ってか、本来の目的は…。
「そうだよ宇田川。クリスチャン〇ールにいつ会えんの?」
「あー」
首の後ろを掻きながら宇田川は目をそらす。
いや、逸らした目を泳がせてる。
「あーえーあー、会ったじゃねぇか。なあ?」
「会った?」
「おう。スクリーン上で」
スクリーン上?
「言っただろ?クリスチャンもバット〇ンになったり、ジョン〇コナーになったり世界平和に尽くしてて忙しーんだよ。先週日本にプロモで来日しててその時会ったんたんだけどよー」
え、それって…。
「1週間遅かったな。まあ、次回来日時って事で」
しーーーーーーーーーん。
ふ………。
「ざけんなああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
って、この怒声はあたしじゃないから!
何メガヘルツの怒声の主は、宇田川に掴みかかる。
「てめえ、何嘘ついてんだオラァ!!!!」
宇田川の胸倉に掴みかかった激切れの翠さんを見て首を振ったやけに冷静な門田さんは、次に隣のあたしを見つめながら肩を竦める。
「ああ、ワリー。ってか、声落とせ。あんたもギョーカイの人間なら、目立ちたくねーだろ?」
「翠、落ち着きなよ」
「そうだよ、翠さん落ち着いて……」
って、何であたしが宥めてるの?
「落ち着いてられっか、ボケ!!!金返せアイドル!!!!」
パシャ。
あれ?今何か聞こえた。
あたしは音がした方へ振り返る。
さっと柱の陰に、誰かが隠れた。
その音に気づいた宇田川が忌々しげにチッと舌打ちした。
「クソッ」
と同時に、翠さんを振り切って、柱のほうへ猛ダッシュする。
「宇田川!」
「逃げんな、アイドル!!」
「あっ!」
あたし、翠さん、門田さんが3人3様のリアクションしてる間に、宇田川は逃げ出したパパラッチらしきカメラマンのジャケットの襟首を掴んでた。
「愛理、オトコオンナ!!こいつのカメラ取り上げろ!」
「え?」
「ラジャ♪♪おい!!コソコソ隠し撮りしてんなゴキブリ野郎ぉ!!!撮るなら正々堂々とやりやがれーーーー!!」
ああ、なんか観点違うよ、翠さぁぁん。
正面に回った翠さんが繰り出したパンチを素早く避けたカメラマンは、蹴りで応戦する。
「こいつ、すげっ!かわしやがった。格闘経験者かよ」
何故か嬉しそうな翠さんが、半月蹴りを見舞わす。
ひえ~~~~~~~~!!!
あたしは拳で口元を覆いながら、辺りを見舞わす。
「あれ?モデルの佐々木翠じゃないの?」
「きゃぁぁぁぁぁ~~~~、宇田川君だ~~~~~!!!!」
「まじ?宇田川光洋?うおおおお!!!」
野次馬達は携帯で写真撮ったり、叫び声上げながら集まってきた。
あ、失神してる人もいる。
って、そうじゃな~~~い!
どうにかしなきゃ!
あたしは、横で呆れながら首振ってる門田さんの松葉杖を咄嗟に奪って、
「おりゃあ~~~~!!!」
と男に投げつける。
後ろから宇田川に羽交い絞めされながら正面の翠さんと戦ってる男は、ふいの松葉杖を避けきれず、「うおっ」と大事そうにかかえていたカメラを落とした。
「おいっ、愛理!それ拾え!拾ってぶっ壊せ!」
男を掴んでいる宇田川が、落ちたカメラをあたしの方へ向かって蹴る。
「お、おうっ」
それをあたしは素早く掴んだ。
とりあえず、ここから離れないと。
「人集まってるよ!宇田川、翠さん、逃げて!!」
言いながら、(元)体育会系の運動能力フル発揮して、入り口とは反対の劇場内に駆け込む。
が。
誰かに足を引っ掛けられた。
やばっ。
二人組みだった………の?
あたしは無様に体をヨロめかせた。
ガンって頭に衝撃が。
殴られた?
あたし、殴られた?
あ。
目の前に、タイルがスローモーションで迫って……。
健人、助けて。
愛理?
愛理?
愛理、愛理、愛理、愛理、愛理、愛理…………。
健人の声が聞こえる……どうしてだろ?
とか思いながら、あたしの意識は闇に消えた。
あたしは、夢を見ていた。
『あんたのせいで、振られだんだよ!どうしてあんな事したの?先輩あんたには何もしてないじゃない!!!』
あたしは、泣きじゃくって怒って半狂乱になっている。
あたしなのに、あたしの姿が…着ている服まで、メークや髪型まで見える。
『俺は愛理の為を思ってしただけだよ』
今度は180度室内を移動して、健人の姿を映し出す。
まだ高校の制服を着ている、健人だ。
ああ、あの時だ。
あたしが大学生だった時。
付き合っていた先輩に振られた、あの日だ。
『先輩はあんたが原因だって知らないけど、あたしは知ってるんだから!!人生で初めて好きになった人に、あたしの大切な人に、どうしてこんなノイローゼになるようなひどい事したの?』
『どうしてって、愛理の為にやっただけだから。あいつじゃなくても、あいつ以外に男なんてごまんといるでしょ?』
「い・ま・せ・ん!先輩だけだったのにっっ。あたしの為って何?あたしの為だったら応援とかするのが普通でしょ!なんでぶっ壊すの。あんた変だよ!!過保護すぎっ!!」
怒ってるあたしは、思わず声にだしていた。
やけに冷静な健人は、あたしに手を伸ばして触れようとする。
「触らないでよ!!!あたしに変態チックな事させたり、頭おかしいんじゃない?あー、やっぱあたしがおかしかった。馬鹿だったわっ!先輩に告白してOKされましたとか、キスしただとか、根掘り葉掘り聞いてくるあんたに素直に言うんじゃなかったっ。人生で、人生で初めての彼氏だったんだよ?きっとあたし一生彼氏とか出来ないよ!!あんたやお母さんと違って、ブスだし、頭悪いし、もう、もう………生きてる価値ないよっっ。死んでやる!富士山の樹海に入ってやるからぁぁぁぁ!!」
あたしは、半分健人を突き飛ばして家を飛び出した。
健人は、暫くその場にぽつんと佇んでいた。
やがて額に手を置き、大きく息をついて天井を見上げる。
「……------……」
小さく健人の口が、動いた。
なのにここからでは健人の形の良い唇から放たれた言葉が、読めない。
後悔、罪悪感、怒り、悲しみ、そして………。
切なさ。
暫くの間ベッドの縁に腰を下ろして頭を抱えていた健人は、突然意を決したように部屋を飛び出た。
外は雨が土砂降りだった。
なのに、傘も差さずに健人は駅まで駆けていく。
着ていた制服も乾いていた髪も、数分でビショビショになっていた。
駅前の商店街のお店の中を1軒1軒しらみ潰しに確認する。
あたしに後姿が似ている人を追いかけては、呼び止める。
何軒か…いや、何十軒チェックした所で、健人は電車に乗り隣の駅で降りた。
また、同じことの繰り返し。
途中で携帯の画面を確認しながら……多分あたしの女友達の連絡先を確認してたんだと思うけど……メールを打つ。
健人が。
こんなにも焦っている。
髪の毛も服もビショビショにぬらして、振り乱して、息切らせて走りまくっている。
あまりにも、あたしの見知っている健人とは大違いで。
いや、あたしは健人の何を知っていたんだろう?
雨が止んでも、健人は走り続けていた。
渋谷に着いても、あたしが行きそうなお店やレストランを1軒1軒まわる。
何時間か過ぎ去って、1件の着メールが彼を止めるまで。
その1件のメールで、弛緩した健人はその場に崩れ落ちる。
膝を、両手を、濡れて水の溜まった地面につけて、目を瞑る。
女友達を無理やり連れ出してバーや居酒屋を梯子してたあたしは、我を忘れるほどベロッベロに酔っ払って、理性を失っていた。
“もう、家に帰ろう。愛理”
なんで今頃こんな夢を見るの?
それとも、現実?
健人はあたしを探している間、ずっと、同じ言葉を唱えていた。
ずっと、ずっと、こう繰り返していた。
『愛理、死なないで。
お願いだから、死ぬなんて言わないで。
俺が、幸せにするから。
絶対に、幸せにするから』
オネガイダカラ、キカセテ
キケナイノハ、オレニトッテ、シンダモオナジダカラ……
『宇田川光洋・佐々木翠 熱愛発覚!~密会発覚に激怒。カメラマン暴行~』
と、日刊スポーツ紙の一面を飾ったのは、その翌日の事だった。