山本 壱悟:24歳
グループ一番の色男だが、物静か。天然且つマイペース。憂い顔で窓の外を見ている時は、今ハマッてるゲームの攻略法しか考えていない。結構ミステリアスな謎男。嘘か真か元カノは関係を暴露されて親が職場クビになった挙句一家離散、果てはブラジルへ強制移住させられた…らしい(?)罪深きヲトコ。By宇田川光洋
今日に限って、時々突然、ニヤリと微笑む男が、一人居た。
極度の色男だし、滅多に見せない笑顔だからか、それとも年末ライブって事で事務所の他のグループと横〇アリーナで歌って踊ってテンション上がってるだけなのか、兎に角その男は始終微笑んでいた。
「壱悟気持ちわりー」
舞台裏でメーク直してもらいながら、隣の金屏風みたいなシャチホコみたいな、いやいや、孔雀みたいな男が小声で呟く。
「なんであいつ顔緩みっぱなしなワケ?知ってる、ウダ?」
ミネラルウォーターを手に汗拭いている背の高い男を顎で指しながら、首を傾げる。
「なんか姉貴ヨーロッパから帰ってるらしいぜ。年末年始。だろ?壱悟!」
名前を呼ばれて水を飲んでいた男が振り返る。
「ああ…そうだけど?」
そう言い切る前に、すでに真顔に戻ってる。
悔しい事に、ファンの数はメンバーいち。モテ数、過去の女の数、ドラマ主演数、CM数どれをとってもメンバーいち…いや、事務所いちの稼ぎ頭。
見た目も艶やかな美少年期を越えて、すっかり天然ナチュラルな色男(注*天然ナチュラルビューティーな壱悟←対極→加工品のナルシスト黒鳥ヒカル)に変身していた(事務所社長談)この口数少ない男が、重度のシスコンなのは仲間内でも有名な話だった。
「じゃあ何?今年はコレ(ライブ)おわったら5日までワイハとかロスとか、ドバイとか行かねーの?あれ?今付き合ってる女いなかったっけ?」
リーダーではないにせよ、メンバーを取り締まってる案外世話好きの宇田川光洋ことウダが、衣装変えながら話しかけた。
「いない」
「あの、デルモは?」
「どれの事?」
「うわぁぁぁ~~~どれだってさ、すげーし。何人に手ぇつけたわけ?」
整った顔の男は、眉根を寄せて考え込む。
「手つけたっていうか、追いかけられてたんだよね?んで、これ終わったらどこに行くの?」
鏡で髪型をチェックしていた背の低い、かわいい系の男がフォローするように付け足し、再度尋ねる。
が、答えは既に皆知っていた。
ペットボトルをリサイクルのゴミ箱に投げつける。
「今年はこのまま川崎の実家かな」
と憂い顔を見せながら独り言のように呟くと、山本壱悟は再度溢れんばかりの笑顔をになった。
玄関には、見た事の無いロングブーツが脱ぎ捨ててあった。
それを見ると、ひとりでに頬が緩む。
あの人が帰ってきている、確固たる証拠である。
「ただいま」
ちいさな声で呟いたが、静かな玄関に響き渡る。
「あら。壱悟よ、お父さん!梢ちゃん!」
年末で家中を掃除していたのか、エプロン姿の母親がハタキを持って2階から降りてきた。
母に促されるまま靴を脱いで居間を通りダイニングルームに入ると、昼間っから酒を酌み交わしている2人が目に入った。
義理の父と、嫁に嫁いで出ていた、姉。
自分が8歳の時、母親が再婚した相手と、その連れ子。
「あら、イチゴじゃない。またおっさん臭くなってるわ」
あはは、と笑いながらも俺を隈なく観察している6つ年上のショートボブの女性に、俺も視線が重力の様に引き付けられる。
「……梢ちゃんは、変わってない」
姉が冗談を言っているのは百も承知だったが、自分の口からはつい本音が毀れ出た。
最後に会ったのは、姉が結婚する3年前。
今年で30歳になるはずなのに、見た目は全然昔と変わっていなかった。
まるで時が止まったかのように。
再婚した時から育ててくれた継父とお約束のような挨拶を交わし、自室に戻って着替える。
この部屋も、1年ぶりだった。
グループを結成して売れ始め、一人暮らしを始めてからは、実家に帰る時間も暇も滅多に無かった。
年始も正月明けの5日の月曜から仕事が始まる。
「さて…どうしよ?」
今年もまともな休暇が取れないまま、突っ走ってきた。
突然何もやる事が無いと、どうすればいいのか解らない。
さて、何をしようかと考えを巡らせながら、不必要な位写真や物や玩具に溢れている部屋に暫く立ち尽くしていた。
12歳の時、町でスカウトされてから母親が集め続けている、俺の記事や写真。
ふと、幾重もの写真立ての奥に隠されてた一枚に目が行った。
意図的に、隠していた、一枚。
そこには、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけた、小学生の俺が写っていた。
事の全ては、思春期の真っ盛りにいた11歳の俺の、小さな暴走から始まった。
それは、たった一つの、キス。
両親が外出していたある日の夜。
俺は、受験勉強しながらこたつで眠りこけていた17歳の姉の唇に、自分のそれを合わせてみた。
周りや学校の友達、又はテレビか本で読んだ知った「キス」が一体どういうものか試したかった。
ただそれだけの理由。
なのに姉は、眠り姫のように目を覚ました。
目をパチクリさせて、唇を押さえながら、高校のブレザー姿の姉は、目の前の俺を見る。
かすれた、乾いた声で小さく呟いた。
「……イチゴ?……」
「ご…ごめっ…」
まさか眼を覚ますとは思っていなかった俺は、慌てて身を離す。
眼鏡をかけて、背を向けた。
心臓が、体を突き破るのではないかと思ったくらい、激しくなっていた。
「イチゴ、どしたの?今、もしかして…?」
バレた。
呆気に取られている姉の肩を掴む。
勢いで、押し倒していた。
眼鏡が飛ぶ。
「梢ちゃんっ」
「え?だ、だからどうしたの?!珍しいよね、イチゴが焦ってって……んっ」
姉は明らかに、パニックに陥っていた。
そんな姉の唇を、再度奪う。
目を瞑ると、雑誌や本で見た「キス」以上の行為が頭をよぎった。
頭の中で「やめろ」という警報が鳴っているのに、好奇心がそれを強制的に打ち消していた。
体の一部が、熱く感じる。
「梢ちゃん、俺っ……はぁっ」
粘着質な音が、居間に響き渡る。
甘い。
懸命に舌を絡ませて、息継ぎする。
「イチゴ上手…」
「梢ちゃんも……」
角度を変えたり、舌を歯の後ろで擽ってみたり、無我夢中で味わっていた。
「もっと、私のキスの練習台になりたい?」
「ん…いいよ…」
何度もキスを繰り返し、気づくと息継ぎの合間に小さく囁いた。
「あいつ、だれ?」
なるべく不自然にならないように、俺は教科書に目を落としながらたずねた。
今日、梢ちゃんが、同じ学校の制服の男と帰宅した。
ただそれだけなのに、気になってしょうがなかった。
「同じクラスの、高橋君だけど?」
「ふうん…」
聞きたいことは山ほどあるのに、声が出ない。
「気になる?」
「……別に」
素直になれないまま、国語の教科書の文字を追う。
「子供にはわかんない事、色々あるのよ」
そう大人ぶって答えて席を立とうとした姉の腕を、気づいたら掴んでいた。
そのまま押し倒す。
「俺、子供じゃない。証明しようか?」
眼鏡越しに、姉を睨む。
「何言ってるか、分かってるの?」
乗りかかっている俺の体を力ずくで押しのけると、梢ちゃんは真剣な顔で俺を見た。
怒っているでも、拒絶しているでもない。
ただ、困惑と、少しばかりの好奇心が、彼女の濃茶色の瞳に宿っていた。
俺は体を離して、眼鏡を外すフリして一呼吸おく。
「性教育は、もう習った」
予想外な事に、姉の顔が一気に火照った。
「イチゴは弟でしょ?私、弟とは…」
「弟かもしれないけど、血は繋がってないよ」
言いながら着ていたTシャツとジーパンを脱ぐ。
「それに、何度も梢ちゃんとキスした」
「そ…れは…ち、ちょっっ、待ってよ!!!あんたまだ中1じゃないっ」
トランクス姿になると、一気に最後の砦まで取り除いた。
俺は素っ裸のまま、姉の前に立った。
「………梢ちゃん、でも俺、男だよ?」
こう改めて観察されると、照れるものがある。
コレが。
自分の分身が、火照りを覚えて硬くなったのが分かった。
「イチゴ、きっと後悔するよ?」
聞きながら、姉がオズオズと俺に触れる。
軽く握られると、ピン、と跳ね上がった。
「あっ!!っ」
俺は体を捩ろうとした。
が、姉の方が早かった。
「まだ皮被ってる……」
十分成長し切れていないそれをしっかりと手に持つと、姉は成れた手つきで強弱をつけてもみ始めた。
「……ぁ、や、やめっ……」
自分以外の人間が触れた事のない場所に触れられて。
体積を増して天を向いていくそれを弄られながら、俺はなすがままになっていた。
そして、俺の体をそのまま床に押し倒す。
「もう精通あったんだ。だって、こんなになってるしね」
「そっ……んな事……ないっ……んあっ」
手馴れた感じで姉は扱き続ける。
「すっごい、濡れ濡れだよ。こんなに、腫れてる」
俺の足元で跪いてる姉が、挑発するように上目遣いで俺を見た。
「ヘンな事……しゃべんなっ……っ」
「イチゴはかわいくてキレイだけど、ここも、キレイ…」
愛おしそうにそうに、なのに妖艶に、微笑む。
姉の今まで見たことのないその表情に、胸が高鳴った。
体温が更に上昇する。
「楽にさせてあげる」
そう言うが早いが、姉は仰向けの俺の体を押し上げた。
「なっ…」
恥ずかしさで、腕で顔を隠す。
「これ、試してみたかった。イチゴ、可愛い」
言いながら、誰にも見せた事の無い、奥の恥ずかしい窄みに舌を這わせる。
「やっ、そんなトコ…梢ちゃんっっんん!」
裏門を通って、柔らかな部分を左右舌で転がしていく。
そして、付け根の方まで散策が済むと、姉は俺のそれをぱくり、と口に含んだ。
「うわっ……あっ…あっ…」
根元から刺激を与えられ、上部を生暖かい舌で嘗め回され、ビリビリと体が痺れる。
「気持ち、いい?」
やさしく聞いてくる姉の声を聞きながら、唇をかみ締める。
こんな快感が、あったんだ。
姉は手で上下しながら、上の部分を口で包み込み飴玉のようにその割れた部分や凸になっている部分を嘗め回す。
ふわふわと浮いているような、なのにゾクゾクと送り込まれる気持ちよさ。
開放されたいのに、囚われ続けていたいと願う、心の矛盾。
「梢ちゃん、も、だめだっ……ああっっ」
そういうが早いが、俺は姉の口の中で己を放った。
「梢ちゃん、こんな事どこで習ったの!」
羞恥と怒りとが入り混じって、俺は珍しく荒ぶった非難を姉にぶつけた。
「どこ?雑誌とか…ホモ小説…とか?」
「あ……あんな格好っ」
「ホモ小説ではよくあるよ、ああいうシチュエーション」
姉の部屋の本棚を埋め尽くしている小説や漫画の類を思い出し、俺は失笑した。
「イチゴのイッた時の表情、すごくキレイだった」
姉が言いながら、キスしてくる。
「じゃあ、今度は俺が梢ちゃんのイッた時の表情、見たい」
俺も応えながら、姉の着ている服を剥ぎ取る。
小ぶりで形の良い、桃のような胸が現れると、思わず俺は息を飲んだ。
ツンと尖ったピンクの先端に、思わず唇を寄せる。
「んあっ……やっ」
「こうされると、気持ち良い?」
吸ったり舌で転がしたり、反応を見ながら楽しむ。
姉が泣きそうな顔で耐えている姿に、堪らなくそそられた。
一度爆発した下半身が、火照りだす。
彼女の下着に手を差し入れると、ヌルヌルに潤っていた。
「梢ちゃん、感じてた?」
「イチゴ、ソコもっと触って…」
言われた通り指を差し入れると、すんなりと蜜壷に指が一本収まった。
「うっ…動かしてっ…んんっ」
「梢ちゃんの中、あたたかいね…」
下着を脱がせて脚を押し広げると、今まで思い描いていた薔薇色に熟れた花弁と果実が現れた。
姉の指示を待ちきれずに、唇を寄せる。
甘酸っぱい、香りが鼻腔を満たす。
「ふわぁぁぁっっ…イチゴっ、もっと上っ」
花弁の上の小さく突起した芽を見つけると、指を蜜壷に差し入れながら舌でその部分を転がす。
「いやっあっあっあっ……ちょ、ままって!」
突然、姉が俺の髪の毛を掴んで俺の顔を引き剥がした。
彼女の、泣きそうに潤んだ瞳とぶつかる。
素肌はしっとりと潤い、桜色に染まっていた。
喘ぎを出すまいと噛んでいた唇は、血のように紅くなっていた。
その表情をみて、膨張していたものが再度破裂しそうになる。
「駄目」
きゅっと彼女の指が輪を作って俺の火照りの上部を握っていた。
「イチゴと一緒が、いい」
身体を起こして俺に唇を重ねながら、姉は俺を押し倒した。
「ああっ……」
どちらが声を出したのかも、分からなかった。
俺は上に乗った彼女の潤いに、満たされていた。
姉と関係を持った翌日。
俺は母親の買い物に連れられて行った新宿で、スカウトされた。
「こんな色っぽい少年、見た事ないですよ」
がスカウトマンの一言だったらしい。
俺と姉との関係は、彼女が大学へ入学して家を出るまで続いた。
社会人になると俺を避けるように出張を繰り返し、実家から遠ざかり、そして数年前俺の知らない男と結婚してしまった。