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朝倉家の温泉旅行    09.02.2009


 「ばばんばばんばんばっ!はあーびばびばっ!!風呂はいったか~~~っっ」



 車内中に響き渡る、我が父のテノール(本人談)…いや、騒音(愛理談)。
あたしと一緒に座ってる隣の健人を見ると、幸いなことにお父さんの大迷惑な歌声は案の定、届いてないみたい。

そして、斜め前の運転席の隣のお母さんは、i-p●dで音楽を楽しみながら、ファッション雑誌を熱心に眺めている。いつもに比べたらカジュアルな格好だけど、相変わらず、セレブのお忍びばりにどでかいサングラスして、これでもかとばかりに香水の匂い…臭いがプンプンする。
てか、もう不快感を感じないのは、あたしの鼻がおかしくなったとか??

運転席のお父さんは、『ド●フ大全集』DVDをかけながら、こーんな風に時たまハミングしちゃいながらハンドルを握っていた。

そう。
朝倉家は、温泉好きのお父さんたっての願いで、超健康美容マニアのお母さんのお眼鏡にかなう“若返りの湯”で有名らしい(?)とある温泉町へ1泊2日旅行が敢行されたのだ。


『また、溜息ついたけど。まだ続いてるの?父さんの鼻歌』
『鼻歌なんてそんな生ぬるいもんじゃないよ。ドラ声?騒音?環境問題だよ』
『愛理も人のこと言える?』
『い・・・いえないけど、健人あたしの歌声聞こえないくせに!』
『愛理の歌声は、迷惑なほど聞こえるよ。特にカラオケ行ってる時とか、なんか制御無しで否応無く聴かされるけど。十八番が大●愛だってのも知ってるし』
『また盗み聞きしてぇ~~~!!!』
『聞きたくないけど聞こえるから、こっちこそ迷惑』
ふふって笑いながら、健人が窓の外を見る。
なーんかやけにご機嫌なのが、あやしいけど。
いつもならこういうファミリーイベント的なの、真っ先に勉強だとか宿題があるからとか避けようとするのに、今回だけは最初からやけにノリノリだった。





そして数時間後、あたしはその意味を悟った。




「ええええ?!お母さんとお父さん、別部屋なの?!?!」
「そうよーー、4人一部屋なんて、狭くて嫌でしょ?しかもいい歳した若者が親と同じ部屋なんて」
「でも、女は女同士とか、駄目なの?お父さんと健人で一部屋でいいじゃん!」
「それは、駄目に決まってるじゃない」
旅館でチェックインを済ますと、お母さんは大きな木製のキーホルダーをあたしに手渡しながら、テンプラ食べたの?みたいなつやっつやのグロスを塗った口を尖らせて、ねえ、とお父さんに目で合図を送る。
「そそそ、そうだ。愛理も健人も、仲良く部屋を使いなさい。露天風呂も部屋についてるんだからな」
ややお母さんに押され気味な感じで、お父さんもあたしたちを説得する。
「でも…」
とあたしが反論する前に、すっと隣に立ってた健人が進み出て、鍵を受け取った。

『母さんのバッグの中に縄とか色々小道具入ってたから、例のアレするんでしょ。そっとしておいてあげたら?』
そうあたしの頭の中で告げるなり、手荷物を持ってさっさと鍵に書いてある『松の部屋』に向かって歩き出す。
「アレって……」
アレ、だよね?
巷で言う、SMとやらで御座いますよね?

そう。読者さんには言うまでもないけど、あたしの両親はSMが縁で知り合ったそうな。
容姿端麗、おまけにミス日本だったお母さんはその世界じゃ超有名な「女王様」だったらしくて、またお父さんはその学歴と社会的地位とは真反対の、超ウルトラM、らしい。
ちなみお父さんのお母さんへのにプロポーズの言葉は『私は一生椿様の奴隷となります。この御身をかけてご奉仕させてください』だったらしいし。

てか、縄って……。
想像すると、娘ながらリアルに嫌だ。
「健人、待って!」
と、あたしも急いで健人の後を追った。
「夕食まで自由行動だぞ~~~~!」
ってお父さんの声が後ろから聞こえてきた。







 『変なこと、しないでよ!』
部屋についてのあたしの第一声は、それだった。
『何が?』
あたしに背を向け部屋の奥の障子戸を開けながら、健人は応える。
『何がって、わかってるでしょ?…あ……』
思わず息を呑む。
障子戸の先は屋外になっていて、石畳の上に数人が楽に入れそうなお風呂が見えた。
その目の前に広がる、見事な山々と青い空に彩られた大自然のパノラマ。

「キレイ……」
おもわずそう一言声が漏れる。
リアル露天風呂。
うわ、すげえぇぇぇーーーーーっ。

と。
そこで、障子戸にもたれて腕を組んでいる健人と目が合う。

にこーーーーっと、整った顔に満面の笑みが浮かぶ。
反対に、さーーーーっとあたしの顔から血の気が引いた…と思う。

『何で俺がわざわざ家族旅行に温泉まで来たか、分かった?』
『わわわ…わかんないよっ』
健人の言わんとしてること、理解してたけど、あえてとぼけてみる。
『個室の露天風呂だったら、絶対母さん達色々と忙しくするだろうし…』
忙しいってのは、多分SMプレイって意味だろーけど、そうあたしに話しかけながら、健人は着ていたTシャツをいきなり脱ぎ捨てる。

突然す、す、すとりっぷっスか???

ちょっと焦りだしたあたしをよそに、健人は続ける。
『愛理も先輩と別れて色々あったみたいだし、俺も大学受験の勉強漬けで、気分転換欲しかったし…』
続けながら、ベルトを解く。
『ちょーーーーーっと待った!タンマ!!あんた何、脱いでるの?!』
急いで目を逸らしたあたしの横をパンツ一丁の健人が通り過ぎる。

って、へ???

『何って、浴衣着てるんだけど?』
さっさと袖を通して温泉浴衣を身につけた健人が噴出しながら、振り返る。
『温泉来たら、これ着ないと。愛理、なんか過剰反応してない?』
窓辺の前の椅子に腰掛けた健人が腕を頭の後ろに組みながら、未だもって戸口に突っ立ってるあたしをよゆーかましながらニヤニヤ見てる。

う………。

これって、何て言うんだろ。
ライオンの檻に放り込まれた兎ちゃんというか、蛇の洞窟に迷い込んだインディアナ・ジョ●ンズっていうのか、嗚呼、比喩表現がわかんねーーーっ。

『愛理、リラックスすれば?浴衣に着替えないの?』
組んだ脚の膝に肘ついて、顎に手を置きながら健人は小首を傾げてる。

そうそう。
相手はたかが健人。
あたしの弟。

と自分に言い聞かせながら、あたしはちょこん、と部屋の真ん中のテーブルに座る。
座りながら、でもやっぱり頭から離れない、健人とのイケナイ情事の数々。



 数ヶ月前。

先輩に振られたあたしは、慰めてくれた健人と口には出していえない行為をした。
ベロベロに酔っていたとはいえ、勢いに任せちゃったとはいえ、後ですっごい後悔した。


健人はあたしたちの「秘密」に関しては、罪悪感とか一切感じていないみたいだけど。

でもあれ以来、実は健人と二人っきりになるのを、避けてた。

なんか、こう、健全なムード漂う話題をしよう!
健全な健全な健全な……。
「お父さんてば、ドリフばっかだった……」
少ない知恵を絞りだして話題を探したのに、健人の
『そういえば…』
の一言で、あたしの実際に出した声はかき消された。
『そういえば、小学校の頃温泉行った時……』
健人が遠くを見ながら目を細める。

あ。
やっぱ顔が整ってて、ムカつく。
ムカつくけど、キレイだ。

『フェリーに乗ったの、覚えてる?』
『全然覚えてない。行ったっけ?』

と、眉根を寄せて、健人が呆れる。
『覚えてないの?酔った俺が覚えてるのに?』
『あれ、健人酔ってたっけ?』
ああ、そんな事もあったよな無かったような…。
『俺、すごい船酔いして、意識朦朧だったんだよ』
『へえ~~~』
『へえ~、じゃないし。全く愛理の記憶力は』
首を振りながら、健人は椅子の背もたれに凭れかかる。
あたしも畏まってた脚を投げ出して、後ろ手に手をついた。



『愛理、この間のあれ、気にしてる?』

と。

緊張感解れたと思った瞬間、ちょっと固めな健人の声が降って来た。
『あれって……何?』
『この間、俺が愛理にしたこと』
『し、し、し、した事って!ささささあ?記憶に御座いませんが?』
汚職事件に関わった政治家か!
みたいな変なとぼけ方をしてみる。
が、健人の神経を逆撫で(?)したらしく、ちょっと見下ろす感じの健人の視線とぶつかった。

『ふうん。記憶に無いんだ?俺が愛理の●●に……』
「どわあぁぁぁぁ~~~~~!!!!解説しなくていいってば!!!!//////」
思わず飛び上がって声に出してしまう。
『つか、もうね、大人の女ですから、大したことじゃないんで御座いますよ、ホホホホホっ。健人も青いなぁーーっ。あれごときを今更気にするなんてさっ』

って、嗚呼~~、健人の表情がみるみる硬くなっていく。
雷雨注意報!みたいな?寒冷前線?ブリザード通り越して竹槍降りそうな予感大なんですが…。

『気にならないんだ?なら、普通に俺の目の前で浴衣着替えれるよね?もちろん』
『余裕ですとも!』

って、あれ?

『愛理は大人の女だし、たかが健人だし弟だから、何も気にする事ないよね?』
さっきのあたしの心の声(独り言のハズだけど)、聞かれてるし!
『ないよ!』
『なら、俺の前で脱いで見て』

まままま、まじ?!

『えーっと、お父さんとお母さんは今頃何してる……っあ!』
回れ右!
して部屋から出ようとしたあたしの腕を、椅子から立ち上がった健人が素早く掴んだ。

『それとも、俺の事、弟じゃなくて男として意識してる、とか』
そうあたしに脳内メッセージ送り込みながら、あたしを引いて抱き込む。

「ちょっ、健人!!」

『脈拍数上がってるよ?』
耳の後ろに息がかかる。
『あ、上がってないから!もう!』
言いながら健人を押しやって、着ていたTシャツを脱いで投げ捨てる。
『ほら!』
履いていたジーパンも脱いで、下着姿になる。
『さあ、浴衣浴衣っと』
部屋の片隅に畳んで置いてある浴衣を取りに行こうとすると、またしても健人に止められた。
『上下ちぐはぐだね。下は木綿だし、全然色気ないし』
言いながら、健人がまた後ろからあたしを抱きこめる。
今度はさっきよりも、力が強い。

言葉とは裏腹に。
背中の下の、薄い布越しに感じる、隆起。
既に硬くて、熱い。

『や……』

と言う前に、後ろから回された健人の手が、ブラの上からあたしの胸を包んだ。
レースの布越しに、先端の部分を摘む。
『こうされるの、嫌いじゃないくせに。前は物凄く、反応してたけど?』
また、あたしの首筋に、生暖かい息を吹きかける。
「前って、酔ってたし、あれっ…は、ちがっ…う…ぁあっ……」
反論しようとすると、胸を刺激する手とは反対の手を、つーっと移動させながら太ももの内側に添えてきた。
と同時にあたしの漏れた肉声が聞こえたかの如く、健人の熱い塊がビクビクと更に硬度を増した。

『目を瞑って、いい子にしてて』
「んんっ……」
健人の手が、あたしのブラの中に侵入する。
そっと先っぽを軽く撫でて、優しく摘み上げる。

じゅっ、て痺れるような感覚。
思わずかたく目を瞑る。

ここで止めなきゃ、と思いながらも、身体全体がもっともっとと疼いてる。
『俺、どれだけ愛理とこうしたかったか、わかる?この間の、あの夜から、ずっとこうしたかった』

そんなあたしの心の声が聞こえてか、健人が優しく囁くように呟きながら、浴衣の帯をあたしの目に巻きつけてきた。

完全な、目隠し。

同時に、健人の浴衣がはらりと音を立てて床に落ちた。

背中に感じる、素肌の温もり。
薄い布地越しの、熱。
その硬い熱を左右に擦るようにあたしの腰の上に押し当てながら、健人の手が触れていたブラを押し上げて両手で片方ずつ包み込む。
『愛理のここは、すごく柔らかい…』
人差し指で蕾を刺激するのも、忘れない。

『もっと、声、出して。ココは固いよ?』
普段の健人からは想像できない甘い囁きみたいな声が届く。
硬く張り詰めた先っぽが開放されて、両手がわき腹を通って下に行く。

「あっ!」
と声に出す間もなく、最後の砦が取り払われた。
『愛理、少し、脚開いて…』
言われるがままに脚をすこーし開くと、健人の指が茂みを探ってその下に降りる。

「ふぁっ……そ、そこは…ダメ…あぁっ」
『もう、ここも濡れてるよ。愛理はもう、感じちゃってるんだ?』
茂みを軽く指で弄びながら、その下の……前に健人に触られた部分を掠っていく。

と。
健人があたしの片手をとって、後ろに導いた。

「うわっ」
思わず、声に出す。
あたしが触りやすいようにちょっと身体を動かした健人の下着の中の、反り立っている熱い塊を握らされたからだ。
滑らかに脈打ってるそれは、上の方に上がっていくと湿り気を帯びていた。
一番上の割れた所は、もうヌルヌルになってる。
親指で擦ると、くちゅっ、ってエッチな音が鳴った。

『愛理の、せいだから…俺も同じだね』
「きゃあっ!!!!」
そういうがはやいが、健人があたしの腕を強引に引いて、部屋を大股に闊歩する。

「ちょちょちょちょ、健人?!?」
一瞬焦りを感じて我に返ったあたしは、数秒後真っ裸に感じる屋内とは違う開放的な空気に、どこへ移動したか理解する。

そして、石畳の上の一つに座らされた。
「ああああっ」
と、脚を広げさせられる。
「いやっ、見ないで!」
いきなり羞恥心が出てきて、脚を閉じようとする。
『なんで?こんなに綺麗なのに』
健人が手であたしの腿を押さえながら屈むのがわかった。
暫く健人が見つめているのが、目隠しされても感じる。
「まじまじと…見ないで…よっ、本番とか、絶対絶対だめだからね!」
『わかってる。でもここは、すごく……正直に濡れてるよ。溢れてる』
健人が指を添えて、押し開く。
指が、一番上の芽を確認するみたいに押す。
「ふあっ。ああんっ」
思わずブルって、身体がはねる。
『もっと、叫んで、愛理』
健人があたしの蜜壷に、ちろちろと浅く舌を這わせる。
「あっあっあっあっ…ダメぇ!!!」
その連動的な動きに、あたしの震えも止まらない。
『指が、吸い付いてる。ここは、俺のものだから…』
健人のつぶやきも、あたしの頭に入らなかった。
「いやっ、あっ、あっあっああん」
小芽を吸いあげられたり、指が浅く侵入したりだとか、その下の窄みまで溢れ出る蜜で擽ったりだとか、身体が健人の動作の一つ一つに反応する。

やばい、あたし、もう………。



「あああああああんんんっっっっ!!!」
咄嗟に健人の手があたしの口元を覆う。



気付いたら、大声を出していた。







 『俺の身体、洗って。我慢するの、結構大変だったんだけど』

 
はっ、って気付いたら、健人が不服そうにあたしの目の前に立っていた。
目隠しも取り払われてるし、えーと、健人の、もうお馴染みになったソレが、まだ元気よい状態でありまして…。

って、あたし、もしかして、もしかしたら……
弟相手に、イッちゃった?????


洗って、と言いながらも、あたしの口横に熟れた果実みたいに赤くなったソレを宛がう。全体的にバランスの取れた、背の高い健人の、身体に不釣合いな程激しく主張している、雄雄しい一部分。先の割れている柔らかい部分は、もう溢れ出てる雫ですっかり覆われていた。
『いつもみたいに、愛理の口で、やって』
切なげに顔を歪めながら、健人があたしを見下ろす。
言われるがままに、ちょっと強引に口の中へ押し込まれるその先端を含み、手のひらでその下の膨らみを重さを量るように包み込んだ。

健人が息を飲む。我慢していた味が、口の中に広がった。

『ここも手でして…あっ』
ずっと押さえていた(らしい)健人は、あたしの手が上下運動をはじめると、唇をかみ締めながら目を瞑る。
息が荒い。
はあはあと、肩で息をしながら、あたしの口の動きにあわせて腰を振る。
『もっと、早く』
言われるがままに、手を上下に動かす。



と。

『愛理っっ』
びくっと健人が身体を硬直し、あたしを押しのけた。

健人の白い情熱が先端から飛び出して、勢いよく空を切った。

 

 



 『すごい、夕陽がキレーーーーーッ!!』
ずーーーとべったりの健人に付き合いながら。 

身体を洗ったあたし達は、お風呂の先に広がる絶景を眺めていた

真後ろであたしを抱きかかえるみたいな体勢の健人が頷くのがわかった。

もーこの際、裸だけどどーでもいーやみたいに開き直っちゃったあたしは、健人に背中を預けてた。

『さっき愛理、凄い大声出してた。聞こえなくても振動でわかったよ。久々に、焦った』 
健人があたしの首に顔を埋めながら、そう言葉を送ってくる。
 
『し、知らないから!』

そういえば、イッちゃった時、口元押さえられてた。

って、考えただけで、ボッて顔が赤くなる。 
やっぱあたし(達)、変態姉弟かも。
だって、お風呂とか、ふつーの家庭はきっと小学生までしか一緒に入らないだろーし。

あ、あ、あ、あ~んなこ~んなエッチな事………。


『別に他の家がどうだっていいでしょ。俺達と比べる必要全然無い』
健人があたしの心を読んだのか、丸聞こえだったのか、ハッキリとした口調でそう答えた。

心なしか、あたしの肩の上に回された腕に、力がこもる。 

『俺は、ずっとこのままでいれたらいいかも、と時々思うよ……』

滅多に本音を漏らさない健人が、小さくため息つきながらそう呟いてるのが聞こえた。







 『愛理?』

食事の後。
再度お風呂に入ろう、という健人のお誘いを丁重に断ったあたしは、さっさと布団の中に潜り込んだ。

かくいう健人も、もう満足したのか、降参したのか、電気を消してあたしの隣の布団に潜り込む。

『何?もうエロ系無しだからね!!閉店でございますっ』
健人に背中を向けて横たわったあたしは、ちょっと大袈裟に忌々しげに返事してみた。
『エロ系無しなんだ。閉店、ねぇ。ふぅ~ん。ま、いいけど。とりあえず、愛理不足は補えたから。俺が言いたいのはその事じゃなくて』
『何?』
『子供の頃温泉旅行行った時の、フェリーの話の続き』
『ああ、あんたが船酔いしたアレね?』
『愛理、俺の手ずっと握っててくれてた』
「へ?そうだったっけ?」
全然記憶にないあたしは、ちょっと間の抜けた声を出した。
第一、フェリーに乗ってまで温泉旅行に前に行った事とかすら、覚えてないし。

『俺が熱を出したり、病気になったり、夜眠れなかったりすると、母さんの代わりに愛理はいつも隣で俺の手を握って心配そうについててくれてた』
『そういうのは、覚えてる。だって、お母さんぜーんぜん頼りになんないんだもん』
『うん』
意外にも健人が素直に頷くと、横寝のあたしの腰の上の手に、健人のそれが添えられた。


『愛理は、たまに姉貴風吹かして、らしい事してたよね』
『たまにって何よ。姉貴風って!!』
振り払おうとすると、狙っていたかのように指が絡まる。


『俺、今夜寝れそうにないから、コレが必要』
言うなり、あたしよりも大きめな健人の手に包み込まれる。


「手のかかる子だわ、もう」

とのあたしの口から出たわざとらしい呟きに、後ろから優しい忍び笑いが漏れ聞こえた。












手から伝わる体温が、心地よくあたしを深い眠りに誘った。









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