スポンサーサイト    --.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
土曜の夜は♪    05.20.2007
 2年後に戻って、まだ寒い2月中旬。

麻布〇番のレインフォレストレストラン。
アマゾンチックな草木があちこちから生えた、ジャングルを模した装飾と象さんとか派手な色の鳥さんとか、巨大植物(?)を模った置物が、1時間ごとに「パオ~~」と鳴き出し、効果音とチカチカする電気効果でスコールが降ったようなイベントが起きる。

こういうトコ、結構好きなんだけど…もしかして初デートにはちょっと印象悪いかな。

久しぶりの、ネットデートだった。

わざわざ印刷までして持ってきた相手情報を再確認する。

HN:KARA55
31歳
独身
東京都在住
身長178cm
体重58kg
IT関係勤務
趣味は映画鑑賞、ドライブ
女性の好み:明るくて面倒見の良い可愛らしいタイプ

ちょっと、あたしと出会う為だけに生まれてきたようなもんじゃない、この男!
なーんて大勘違いしそうな勢い。
プロフィールに乗っていた写真も、なかなかな感じだったし、数回チャットしてみたけれど、高感度◎だった。

うん。なんか女の勘で、今回は上手く行きそう。

メイクは完璧。
服も男受け第一のエ〇ちゃん系JJファッション。
いつもはストレートのセミロングも、ふんわり巻いてみた。

ああ、リップグロスが乾いてきた…。もっかい塗っとこうかな。
と、化粧ポーチをまさぐっている所に、
「小俣さん?」
上から、男らしくてちょっと鼻にかかった渋めの声が降ってきた。
「唐沢さん、ですよね?」
もう十何人もネットで出会った男達とデートを重ねてきて、実は結構慣れてきた。

1.小首をちょっと傾げて『清潔な』(←ミソ)笑顔を称えながら小さく一礼する。
2.顔を上げて、上目遣いに男をチラ見するふりして『瞬時に』かんさつする。
この時口元はジェロ風アヒルぐち。

顔よーし。
頭髪よーし。
身なりよーし。
腹と顎の下の脂肪0%よーし。

結構…いい男じゃない。写真そのまま!

「待たせてしまいましたか?」
唐沢さんは「申し訳御座いません」と本当に申し訳なさそうに謝りながら、あたしの前の椅子に座る。
「いえ、私も今来た所です」

嘘よーーーーーーーーーーー!

もう30分も待っていました。貴方の事を。
「面白い雰囲気の所ですね。この間雑誌で特集されていましたよ。女性に人気みたいですね」
ニコリ、と微笑む。
あ、ちょっと歯が黄ばんでる。タバコ吸うのかな?

狂言師の何とかって芸能人に似てるなあ…と思いながら、唐沢さんの面長な顔や(浮世絵?)、ふっさりと軽くボディーパーマがかかっているらしき髪形(あと10年はハゲないでしょ)、細めながらキリリと男らしい瞳をまじまじと観察する。

今まで出会った男達の中で一番まともかも…。

「小俣水名子です。ちょっと…唐沢さん見て安心しちゃいました」
男心をくすぐる言葉その1オッケー!(←心の中でガッツポーズ)
「え?僕が、ですか?」
「私、こういうオンラインのデートサイトで出会った方とデートとかって初めてで…」
本日の大嘘その2。
もう何回もデート経験済みです。ハイ。

でも、久々に散財してお洒落してよかった。
パンツまで新品ですよ。

「実は、僕もなんですよ。だから小俣さんに実際にお会いして、写真と同じだなって思ったんです。良かった」
「え、そ…そうなんですか?それはあたしも...良かった」
「あの、何か注文しませんか?ええと、メニューは、と」
「そうですね。お腹減りましたね」
と、あたし達はメニューを眺める。

『ミラノ風カツレツアマゾンソースがけ』
『NYビーフステーキアマゾンペッパー味』
『ほうれん草と肉のラザニアアマゾンマッシュルーム入り』
の3品が目に飛び込んでくる。
…なんだこの『アマゾン』づくしは。

でも、食べたい!
いやきっと全部1品1000カロリーはするよ絶対。
「う~ん、水名子迷っちゃうなあ~vvv」
大嘘その3
小首を傾げながら、でも視線はこの3品に釘付け。

食いて~~~~~。

「僕はじゃあ、ミラノ風カツレツ…あ、でもラザニアもいいなあ。でもやっぱ、NY風ステーキにしておこう」

……見てるモン一緒じゃない。

「小俣さんは?」
唐沢さんはパタンとメニューを閉じテーブルに置く。

あたしもステーキ………
アマゾンで採れたハウスサラダで

ああっ、女のプライドが食欲に勝った!
小さく「きゅるるるるるる~」とあたしのお腹が不満足そうに悲鳴を上げる。
「それだけですか?」
「え、あ、はい」
肉が食べたい~
「少食なんだ、小俣さんは」
いいえ全然
あなたが選ぼうとした3品全部食べれる自信あります。
「そんな事無いですよ。唐沢さんはワインとか飲まれます?」
「僕はビールが飲みたいかな。小俣さん、赤?白?」
「赤のメルローで」

ウェイターを呼んで淡々とオーダーを告げる唐沢さんは、オーダーを終えると
「それで、何から話そうか」
と私に向き直った。
「唐沢さんはIT関係の会社にお勤めなさっているんですよね」
「実は、友人と2人で1年ほど前に会社を立ち上げたんだ」
え、経営者?
でもあまり根掘り葉掘り聞くと金目当てと思われるので、今回はそれ以上切り込むのを避けよう。

「私は、フリーランスではないんですけど、今の会社では主に商業目的な商品や広告をを英語に翻訳とか通訳しているんです」
「へえ、どんなの?」
「技術関係の日英訳とか、小説、映画の翻訳が主なんです。契約している会社から依頼があれば通訳もしたりしますけれど」
「僕、仕事の関係でよくシアトルとかシリコンバレーに行くよ」
「じゃあ、サンフランシスコとかって行ったことありますか?私、そこで14になるまで育ったんですけど」
「あるある!毎年行ってるよ!そうかあー。いいね、カリフォルニア。アルカトラズとか行った?」
「中学の頃学校のクラスの一環で行きました」
「坂とか、家とか、いいよね~。あ、来た来た。じゃあ、乾杯しようか」
「はい」
共通の話題が出来てちょっと嬉しくなる。
あたしの腹は相変わらず小さな主張を続けてるけど。

「じゃあ、君の瞳に乾杯!」
君のひと……?
ふ、古い
トレンディドラマ世代?
「か、乾杯ー」

あたしたちはグラスを鳴らしてこの出会いを祝った。



サーバー・レンタルサーバー カウンター ブログ