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サンクチュアリ    05.20.2007
 あれから毎日、タロから電話が来るようになった。

気づくと、仕事の合間や電車の中で頻繁に携帯をチェックしている自分が居た。
電話で直接話が出来なくても、
「俺、今授業の移動チュウでぇっす。隊長はどっこでっすかぁーーー?」
なんてものから
「平泳ぎ自己ベスト更新したよぅ~~~!お祝いにミーナの裸エプロンが見たいどぇーーーっすっ」
なんてものまで、あたしの留守電にはチェックする度必ずタロのメッセージが入っていた。

もしかして、あたし徐々に......タロワールドに洗脳され始めてる...のか?
タロがあたしの心のサンクチュアリに侵入してる!?


約束の5日後。
タロは久しぶりにあたしのアパートへやって来た。
今日も練習直後らしい、半渇きのクチャクチャヘア。
ドアを開けるなり、
「ただいま、マイハニィ~~~~」
ぎゅ~~~~~~っと抱きしめられる。
「ハニーじゃないっ」
ゴン、とタロの頭にゲンコをくらわす。
「全く、どこでそんな英語覚えたの?」
近所に見られていないかキョロキョロと確認して、タロをアパートの中に引き入れる。
「ビバリーヒルズ青〇白書ぉ借りて観たぁ~~~~。ディランが言ってたよー」
ビバリーヒルズ......?
それって90年代のテレビシリーズじゃ...??
古っ。

「あーそうですか。それは良かった。んで、夕飯どうしようか?スーパーにいって何か買おっか?」
Tシャツとジャージという、いつものタロファッションに身を包んでいるタロは、キッチンの方へやってきて、冷蔵庫の中や戸棚の中を勝手に確認しだす。

わざとか無意識か、あたし越しに上のキャビネットの戸を開け閉めして食材や調味料を探している。
タロの男らしい喉元と顎まわりが目の前にあった。

翠さんが言ってたけど...もてるんだよね、この子。
タロの不快では無い匂いがあたし付近を取り巻く。

確かに......こう目の前で見ると、背が高いし、顔も中の上くらいだし、けっこう男の色香......があるような無いような...?

「多分俺......何か中華作れるアルヨ」
これさえ無ければ。
黙ってさえいれば馬鹿だってわかんないし、見られない事も無いのに。

ニラ、トマト、ベーコン、冷や飯に卵を取り出すと、さっさとそれらを適当に刻んで、パッパとフライパンで炒め始める。

は、速い!
そしてこの手際の良さ!
女のあたしの面子丸つぶれっす。

タロは20分もしないうちに、豚トマトとネギチャーハン、ニラ玉を作ってくれた。

「おじさんとおばさんは元気?」
タロの中華料理を食べながら、タロのご両親のお店をふと思い出して訊ねる。
「母ちゃん、ほぼ毎日電話してくるよぅ~~~。ご飯食ったかとか、服洗ったかとか、どーでもいい事ばーっか。父ちゃんはまだ元気に生きてるみたい~」
思わず、苦笑。
おばさん、やっぱ心配してるのね。
「ミーナの父ちゃんと母ちゃんは?」
「お父さんは相変わらずマジメ~に仕事してるらしい。お母さんは、今韓国俳優とドラマにど~~~~っぷりはまっちゃってる。東京のあたしに会いに来ないで、韓国にばーっか遊びにいってるみたいよ」
あたしがこんな風にタロに会ったり、デートしたり、ましてや告られたなーんてお母さん、露知らずなんだよなあ。
「ミーナの母ちゃんはミーハーだなぁ。俺んちの母ちゃんなんて演歌歌手しか知らんぞ」
タロは喋りながらぺロリと自分の作った料理を平らげた。



食事を終えて。
あたしは皿洗いを終えると、リビングのソファに座ってテレビを観ているタロにデザートにと抹茶アイスを持っていった。

「あの......さぁ」
お笑いクイズ番組を2人でアイスを食べながら観ていると、タロが突然隣のあたしに向き直った。
「キス、していい?」
おずおずと、落ちつかな気に訊ねる。
タロの視線は、アイスを食べてるあたしの口元に.........。


って、きゃあ~~~~~~~~~~~~~~~~~////////

心臓がバクバク鳴り始めた。

この小説、擬音と感嘆詞ばっかって思われているみたいだけど、もうどうでもいいやっ。

こいつのせいで、あたしの寿命が減ってる。絶対!

「い......いいけど、別に」
「うしっ。じゃあミーナ、目ぇ瞑ってぇ」
そんなあからさまに指示されると......。
テレルじゃねえかっ。

でも言われたとおり、目を瞑る。

ゆーっくり重なってくる、タロの唇。
何度か確認するように押し付けた後、下唇が捕らえられる。
「......んっ」
ゆっくりたっぷりと味わった後、上唇も同じ風に優しく味わう。
「...んんっ......ぁ」
そのうち、タロの舌が恐る恐る侵入してきて、あたしのソレに絡み付いてきた。
口の中を確認するみたいに、歯の裏から頬の内側まで、舐めるように味わう。
お互いをせせりあう。
「ん...ん......っ」
「ミーナ......甘ぃ......」
タロの口の中も、ほのかに甘くて苦い抹茶の味がする。

ああ、まただ。

体がひとりでに発情しちゃう。
下肢がうずうずしてきた。

たかがタロとのキスで。
されど、タロとのキスで。


「ミーナ、俺.........」
長~い拷問のような口付けが終わると、タロはまごついた声で囁いた。
「今、すんげぇ~~ミーナが欲しい........かも」




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