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デートin東京 Ⅳ    05.20.2007
 キスだけでこんな感じちゃうなんて……何年ぶりだろ?

「あの…もっかいしていい?」
タロが言いにくそうに、例のアレ(上目遣いのお願いします風ワンコの目)で、あたしに詰め寄る。
「ダ、ダメだすっ。もう今日は!」
やばい、噛んだ。
動揺してるぜ、水名子さん。
ドキドキがとまんねえーーーー!!!

「なんでぇ?」
タロが不満そうな声を上げる。
「なんでって、こんな事してたら……あたし達元に戻れなくなっちゃうでしょ?」
嗚呼、目が合わせられない!
ずっと下を向いたまま、手はタロの胸を押しやったままのあたしは、気まずくなって横を向く。
「俺はもう戻りたくナイよ。蛇の生殺しだもん……」
「駄目。ダメったら、ダメ。今日はもう…」

「俺さあ……」
タロの胸を押さえているあたしの手首を掴んで、タロが囁く。
「馬鹿だし、水泳しか“とりえ”無いけど、ミーナの事、本気だよ?遊びとかじゃなくって、すっげー本気。ずっとずっと好きだったよ。12年以上も前から。 2年前田舎に来てくれた時、やっぱ俺確信したんだよねぇ。俺、ミーナの事ずぅーーーーーっとココで待ってたんだあ、って」
耳まで真っ赤になりながら、タロは言葉を紡ぐ。
「ずっと自分のやりたい事知っててぇ、周りが何と言おうとそれに向かって突っ走ってって、通訳とか翻訳とか、世界を股にかけてるミーナ見て、俺もミーナと同じくらい世界に羽ばたけるヲトコ(漢)になりたいなあ……って思った。ミーナに認めてもらいたいなあーーって。」

“世界をまたにかける”がオリンピックで金メダルですか、チミは。
スケールでかっ!!

「もう認めてるよ。ほら、Boys be……」
「あんびしゃ~~~~~~っす」
「そう。あれ、殆ど全て実行してるじゃん、タロは。平泳ぎだったかバタフライだったか自由形だったか忘れたけど、日本新記録持ってるし、全国大会で優勝してるし、オリンピックだって……」

「ミーナ今、誰か男いるっ?あのアキバとはまだ付き合ってんの?!」
人の話をまたもや無視して、太郎は声を上げる。
ぐっと手首を掴んでいる手に力が入ったのを感じた。

犬みたいな目が……真剣だ。

「アキバ、って坂口さん?何度かデートしたけど、今じゃ普通の友達だよ」
1回ヤラレちゃったけどね。
でも言わない。

すぅ、っとタロがあたしの手首を開放してくれた。
「なあんだ。良かったぁぁぁ~~~」
タロはあ~~~、と安堵のため息をついて、頭の後ろで腕を組む。
と、思ったら、今度は眉間にシワを寄せる。
ほんっと、コロコロ表情が変わるわ、この子。
「俺…さあ、ミーナの過去の男の話なんて、考えたくもないし聞きたくもないけどぉ……でも実際あの眼鏡と一緒にいるミーナみて、すっげーシットしたっ。頭オカシクなる位」

ちょ、直球ーーーーーーーーーーーーーーーーっ。

「やっぱもうダメ……俺、言うよ。次のオリンピックまで待とーと思ってたけど、変な虫これ以上ついて欲しくないしぃー」
独り言のようにブツブツ呟きながら、タロは意を決したように「うん」と頷く。

と、ベンチから跳ね上がるように立ち上がって、あたしの前で土下座する。

「ちょっちょっ、どーしたの突然?!顔上げてよ!!!!」

まじで、こんな公衆の面前で。
何かのプレイとか思われるでしょ!!

タロは三つ指つけて、深々と頭を下げる。


「俺と、正式に付き合って下さいっっ。お願いシマッス!」



顎関節症のあたしの顎が、外れそうになった。
衝撃の告白。

今時、こんな告白の仕方有り?
こんな
『お嬢さんを嫁に下さい』風の土下座されて、あたしはベンチで足を組んで座ってて、傍から見たら……

SMの女王?
「足をお舐めなさい」ですか?

あたしはどーすりゃいいんだ????


「とりあえず……時間が欲しいよ、タロ」
あたしはオロオロしながらタロに答える。
「いつまで?明日ぁ?明後日ぇ?明々後日ぇ?」
素早く顔を上げて、タロは複雑な表情で聞き返す。

「多分……1週間以内……かな」
「ようし、オッケーーーーーーーーーーーっ!!!!」
ガッツポーズしながらタロは立ち上がる。

いや、別にあたし「はい」とは……。
何だこの喜びようは?

「じゃあ、ミーナの1週間俺にちょーーーだいっ。『ダメです』なあんて、絶対言わせないかんねっ」
そういうが早いか、タロは膝や手の土を払い落としあたしに再び手を差し伸べる。

「そうと決まればまずは腹ごしらえだねぇっ、隊長!!!クレープ食べにいこっ!!」
と、あたしの手を再度引いて、原宿方面へ歩き出した。





原宿でクレープ食べて、洋服や小物を見て、表参道ブラブラして、気付いたら時間が物凄い速さで過ぎ去っていた。

表参道駅から渋谷駅に戻ろうと、電車に乗る。
帰宅ラッシュ時で混んでいる車内に乗り込むと、あたしはタロに訊ねた。
「タロ、今晩は練習無いの?」
ドアの真横で、タロはあたしを他の乗客からガードするように立ってくれてる。
「するよー。帰ったら」
タロのG-SHO〇Kの腕時計を見ると、6時30分を過ぎていた。
顔をあげると、タロが寂しそうにじーーーーーっとあたしを見ている。
「ミーナ、帰りたい?」
いや、そういう意味で時計見てたんじゃないけど。
「ううん。でも、タロ練習あるんでしょ。毎日練習してるんだなー、と思って」
あたしの顔を覗き込むタロに向かって微笑む。
タロは
「日本選手権ちかいからねぇ」
とため息交じりで答えた後、「あ」と手を叩いた。
「ミーナ、6月8日あけておいてねっ」
「6月8日?何が有るの?」
「俺の決勝せーーーん!」
俺の…?
「え?予選は?」
タロは顔の前で手を振る。
「だいじょーぶだいじょーぶ」
大丈夫なもの...なの?
「ふうん。んで、8日はタロが出るのね?」
「8日だけじゃないけどぉ、もし何ならミーナ6月7日と8日両方応援来てよっ♪俺、7日に平泳ぎ出るけど、8日は自由形50にメドレー出るしっ。あー、したら超やる気出るぅ~~~。カ〇ロット太郎もスーパーサ〇ヤ人に大変身だよっ」
ニィ、と口角をキュッと持ち上げて微笑むタロ。
「マニアックな……。あ、無理無理。両方は無理。でも、8日は開けておいてあげてもいいよ」
あたしがそう言うなり、
「やったねぇーーーー!」
と混んでいる車内のどさくさに紛れるフリしてあたしを軽く抱きしめた。





「浮気はー、ぜーーーーーったいダメだかんねっ」
「はいはい」
「ラブコールは毎日デスよ。オーケーイ?」
「OK」
「5日後は何の日ですかぁ~~~?」
「タロがうちに来る日です」
「ハイ。カクニンオッケーーーーーッ」

タロはいちいちこれから先1週間の予定をあたしにカクニンすると、駅の改札まであたしを見送りに来た。タロとはここでお別れだ。

「じゃ、電話頂戴ね。タロ」
あたしが踵を返して改札口に向かおうとすると、腕を引っ張られた。
タロは屈んで
チュ。
とあたしの唇に小さくキスを落とす。


やっぱだんだん図々しさが増してるよ、この子はあ!!!(←怒)


「キッスどろぼ~~~~♪ゴチでぇーーーっす」
上機嫌なタロは、あたしの姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。





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