やっぱダークでへヴィだわ。坂口さんの過去。
いや、まだ現在進行形なのか?
いずれにせよ、だから妹さんの危篤の知らせにあんなに動揺していたんだ...。
チャットで何回か話して、1回しかデートもしていないのに。
再度水を飲んで、息をつく。
つくづくあたしは男運が悪いらしい。
もう諦めの境地に入りかけてるけどね。
「よしっ」
あたしは小さく気合を入れて、リビングに戻った。
ソファの上で、坂口さんはまだちびちびとお猪口の中のお酒を飲んでいた。
顔は、無表情。
「今日はこんなに飲んじゃって、運転して帰れないですね。終電...何時だろ?」
さりげなーく、帰宅を促す。
坂口さんはトン、と小さな器をテーブルに置く。
「水名子さん。あなたの最後の相手はマゾだった、と仰ってましたね?」
「え?ええ。後味最悪のM男でした...けど?」
「僕はデートも、最後に女を抱いたのも1年以上前なんです」
「ええ...」
何が言いたいんだこのお兄さんは?
ちょっと身構える。
「そんなに身構えられると、こっちは何も出来ませんね」
言いながら、坂口さんはソファの反対側のあたしの方へ、距離を縮める。
ちょっちょっちょ待って!
「僕は34にもなって、恥かしい事にあまり女性経験が無いもので」
眼鏡を外し、髪を掻きあげる。
「どうしたんですか、坂口さん?悪酔いしてますねー?は、はははっ」
笑えないっつーの!
押しのけようとしたあたしの腕が、坂口さんに捕らえられる。
「手紙を、読まれましたね?」
眼鏡のない坂口さんの目は、怒っているというより悲しそうだった。
どす黒い何かが渦巻いたような、寂しそうな瞳。
「え?て...手紙?何の事ですか?」
しらばっくれてみる。
「嘘がお下手ですね。さっき台所へ行かれたとき、ポケットから落とされましたよ」
どっひゃあああああ~~~~~~!
慌ててて、ちゃんとポケットに入れてなかったんだ。
じ、自爆!!
「これはね、メグが...妹が17の時初めて僕に書いた手紙で...」
坂口さんは掴んだ手を捻り上げる。
イタイイタイ!
「内容はご覧になられた通りですよ。僕らはそういう関係でした。......妹が再度入院する1年前までは。...今日、医者からの宣告を聞いて...大事にしまってあったコレを咄嗟にお守り代わりに掴んでいたんです。......奇跡が起きるんじゃないかと」
ヤダ怖い。
神様仏様、タロでも誰でもいいから助けて!!
「ちょっと、止めてください!大声出しま...んぐっ」
男の力で押さえつけられ、唇を塞がれる。
酒臭い息。
大胆に舌が侵入して、歯の裏やあたしの舌に絡んでくる。
意思とは裏腹に、彼のキスに否応なく応じてしまう。
息継ぎをする時間も無く。
唇を離すと、糸が引く。
どちらの唾液なのか解らないほど、激しい口付け。
あたしの腕を捕らえている方とは反対の腕で、D〇ORのピンクのTシャツが押し上げられる。
「こんな時間に不用意に男を家にいれたらいけませんよ」
「坂口さんっ...んんっ」
あたしの首筋に激しくキスの雨を降らしながら囁く。
鎖骨のあたりまでTシャツが押し上げられると、荒っぽくブラが剥ぎ取られた。
部屋はそんなに寒くないのに、冷気を感じて胸の蕾が固く尖る。
さっきまであたしの口を塞いでいた坂口さんの唇は、あたしの露出した胸の頂を捉えた。
「ああっ」
こんなシチュエーションなのに、思わず声が出てしまった。
チュッと吸いながら、もう片方の手はあたしのジーパンのボタンを外しにかかっている。
ジーパンを脱がすと、坂口さんは性急だった。
あたしの肩足を押し上げ、すばやく花園の中に指をつるっと滑り込ます。
まだあたしの準備ができていないのは明らかだった。
だけど坂口さんは自分の服を脱ぐなんて時間も惜しむように、手早く片手でベルトを外すと、穿いているスラックスの中から赤く怒張している自身を取り出した。
色白でキレイな坂口さんの顔とはまるで正反対の、意思を持った生き物のようなグロテスクな自身をを掴んだまま、あたしの膝を割る。
そのまま、グイッと無理やり侵入してきた。
「いたっ!いたたたたたっ!!んんぐっ!」
坂口さんはあたしが苦痛の悲鳴を上げるのも許してくれなかった。
再度あたしの唇を塞ぎ、荒々しく腰を突き上げながら胸を揉みしだく。
何度か出し入れしていると。
坂口さんの先端からこぼれ出ている露なのか、あたしが彼の大きさに徐々に慣れて濡れてきたのか、動く度にだんだんクチュクチュとエッチな音が大きくなり、彼の一突き一突きがそれなりの快感に変わっていく。
「ん...あっ...っ」
坂口さんの口から喘ぎが漏れる。
肩を上下させて息を吐きながら、パンッパンッと激しくあたしに打ち込んでいく。
「はあっ......あっ......はあっ......」
男の人の喘ぎ声って...結構色っぽいなあ......。
なんて天井を見ながらぼんやりと考える。
やけに冷静な自分がいた。
「はあっはあっ......はあっ...あっ...あっ」
時間が経過するにつれ、坂口さんの苦しそうな息遣いが、徐々に切羽詰ったものに変わっていく。
「水名子...っさんっ......ああっ」
ちょーっと待った!
中出しだけはカンベンしてよ!!!!
クライマックスを迎えそうな坂口さんの表情(カオ)を見て、あたしの理性が悲鳴を上げる。
その心の絶叫が聞こえたのか、坂口さんはスッとあたしの中に埋めていたモノを取り出した。
あたしの愛液やら坂口さん自身の汁やらで、引き抜かれた彼のソレはグチョグチョに濡れて光っている。
「......はあぁぁぁっ!」
恍惚の絶頂に達した瞬間。
ブルッ、と坂口さんの体が震えたかと思うと、彼の薄ピンク色の割れた先端から白濁した熱い情熱が、数度弧を描いてあたしの胸に飛び散った。
全部を出し切ると、坂口さんはあたしの上に崩れ落ちた。
そして、狂ったようにあたしをかき抱く。
坂口さんは、大きな声で子供のように泣いていた。