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フホウ侵入 Ⅲ    05.20.2007
 い、今のはいったい何だったんだ?
「遠慮無しにするからねっ」なんて、意味が分からない。
「12年も待っていた」って、あたしの事?


まあいいや。
でもあの子...男のニオイがするって言ってたよね?
坂口さんのニオイがするのかな?
クンクンと着ている服のニオイを嗅いでみる。
「別にしないじゃん」
でも、とりあえずお風呂にでも入っておこう。
時間も時間だし。

数分でお風呂が沸く、湯沸かし機って使えるテクノロジーのグッドな例よね。
取り付けるのにお金が要ったけど、すっごい便利とか思いながら丹念に体を洗い、湯船に浸かる。
「気持ち良い~」

何故か、一日の大半を過ごした坂口さんの事では無く、タロの言動の方が気になっていた。

あんなカオ、あの子でもするんだ...。

あたしの記憶の中のタロは、いつも笑っているか、拗ねてるか、困った顔しかしていない。

陽子が「あの子は負けず嫌い」といっていたのを思い出す。
そうだよね。そうじゃなきゃ、弱肉強食のスポーツの世界では生き残れない。
ましてや、オリンピックなんて世界各国の優秀なアスリートの、その中の負けず嫌い1番さんが集まって戦うんだから。

しかし、さっきのアレは果たして“愛の告白”か何かだったのかな?
イヤ。
「好き」や「愛してる」の一言も無かった。

「...結局何だったんだ?」
タロの思考回路がイマイチ......いや、全く持って全然さっぱりわからない
タロの事だ。きっと大した意味は無いのだろう。
ああもう。
ウダウダと考えるのを止めて、浴槽から腰をあげる。

「タオル、無いじゃん」
今朝、バスタオルを洗濯籠の中に投げ入れた事を思い出したあたしは、濡れた体のまま、真っ裸で隣の玄関横にあるクロゼットまでタオルを取りに行く。
積み重なっているタオルの山から一枚掴む。



と。













「ミーナぁ!!俺やっとケータイ手に入れ・・・・・・・っ」


ガチャ、と勝手に玄関のドアが開いて、『SOFT〇ANK』と書かれている紙袋を手に持ったタロが姿を現した。

「あ......」






そのタロの視線が、あたしの顔から胸のあたりをさまよい、
更にはその下の......



















ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

ボゴッ。


あたしは、瞬時にタオルを引き寄せて胸を隠すと(下半身はすっぽんぽん状態)、タロを思いっきり殴り飛ばしバスルームに駆け戻った。




信じらんない信じらんない信じらんなーーーーーーいっ!!
何勝手に人の家不法侵入してんの、あの子はあ!!


タオルをきつく抱いたまま、バスルームのドアの前でうずくまる。
タロに、見られた。

す、す、素っ裸を。

あのね、過去にベッドインした男達にはみーんな見られてるし、別に減るもんじゃないのよ。いい男とだったらすっぽんぽんもありかなー、とか思うわよ。床の上限定でね。

だけど、タロは、タロは......
何かイヤだ。


「あ、あのう~~~......ミ、ミーナぁ~~?」
バスルームのドア越しに、タロが弱々しく声をかけてくる。
「ごめんなさあい......俺、ドアの鍵開いてたからぁ......あのぅ...」

タロの表情が見なくてもわかる。
捨てられた子犬のような、しゅんとした顔。

あたしの見知った、タロのカオ。

「駄目、許さない」
しーーーーーーーーーーーん。

少しく間をあけて、タロはボツボツと話し始める。
「別に、俺、そんな見てないよぉ?さっき、あの後ちょっとケータイ買いに行ってて、ハンコとか無くて大変だったけどぉ、プリペエドとかいうのだったら買えたんで、ミーナに知らせようと思って戻ってきたんだけどぉ......」
「帰って。今日は帰りなさい、タロ
「えええ~~~~っ!だって、まだ、夕飯~~~~~~」
まだ食べて帰る気だったのか、この子は!
「夕飯はナシ!お互い大人なんだし......あ、あんたはまだ未成年だけど、でも、あたしもあたしの生活があるから。もう勝手に家の前で待ち伏せとか、止めて迷惑この上ない

しばしの沈黙の後、
はあ~、と大きな溜息が聞こえた。
ガサゴソと紙の擦れる音が聞こえ、やがて
「分かったよぅ」
と寂しそうに告げる。
数秒後、玄関のドアがパタンと閉まる音が聞こえると、あたしはそっと浴室を出た。



ドアの前には、タロの新しい携帯の番号らしきものが書かれた紙の切れ端が落ちていた。





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