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フホウ侵入    05.20.2007
HN:SAKASHIN-34
34歳
独身
神奈川在住
身長175cm
体重55kg
研究員
趣味は美術館巡り、寺社巡り
女性の好み:特になし


あたしは再度今回のデート相手の詳細を確認した。
出張から帰ってきてからここ何回か、この『SAKASHIN-34』さんとチャットしている。

この『女性の好み:特になし』っていうのが多少気になるんだけど、今回もJJ系OLファッションで身を包んだ。
「ようし!!」
唐沢さんとのSM事件以来のデートなので、気合を入れる。
「会話してて変だと思ったら、即効帰ろう。うん」
自分に納得させるように独り言を呟いて、頷く。

待ち合わせは横浜在住の彼に合わせて、無難に桜木町駅前。
約束の時間より15分も早くついてしまったあたしは、バス停前のベンチに腰掛けて『SAKASHIN』さんが現れるのを待った。

5分も経たないうちに黒のA〇DIが横付けされて、窓がウィーと降りる。
「OMAROSEさんですか?」
眼鏡をかけた男の人が顔を出す。
この人だ。
「あ、はい。あの、OMAROSEこと小俣水名子です。えっと、SAKASHINさん?」
クスリ、と眼鏡の主は微笑む。
「坂口です。どうぞ、乗ってください。ベイブリッジでもドライブに行きませんか?」
言うなり、坂口さんは助手席のドアを開けてくれた。


隣で運転している坂口さんを、失礼にならない程度にチェックする。
顔は...福山〇治似?それに眼鏡をかけた感じで...。

今までのデートの相手の中で一番イケメンかも!

嗚呼、サ ク ラ サ ク・ ・ ・ ・もう満開!ブラボーーー!!!


「僕の顔に、何かついていますか?」
はっ。
観察しすぎだ。
「い、いえ、眼鏡をかけていらっしゃるんだ、と思いまして...」
「コンタクトレンズが合わないんです」
「たまにそういう方いらっしゃるみたいですね」
「水名子さん、ベイブリッジには?」
「前に...1度...」
元彼とね。
「元彼、とか?」
う。
お察しどおりで。
「はい」
「ベイブリッジを渡るとそのカップルは絶対結ばれない、っていうジンクスあるの知ってますか?」
「え、そんなジンクスあるんですか?」
「有名らしい。だから、僕達で試してみませんか」
「はあ」

この人...ロマンチスト

「僕は超現実主義者ですよ。だから、霊とか超能力とかジンクスだとかそういう根も葉もない噂は信じない」
サイババですか、お兄さん。
あたしの心を読んだみたいに坂口さんは先に答える。

「なんか、坂口さん読心術に長けていらっしゃるみたい」
「そうかな」
ちょっと人を突き放した冷たい感じのタイプ。

でも、良い男ーーーーー!

季節も新緑の春だけど、あたしの心も氷河期が過ぎて春が近づいている

「水名子さんは、翻訳の仕事をしているっておっしゃっていましたよね」
「ええ。坂口さんは、何か研究をしていらっしゃるんですか?チャットで何かそんな事を書いていらっしゃったような」
「水質と微生物の研究です」
「へえ」

つまんなそう。

「僕には、結構楽しい仕事ですよ。人間と関わらなくていいから」

あ、また読心術。
“人間”なんて自分が妖怪みたいな言い方...。
思わずクスリ、と笑う。

「まあ、人間が一番クセありますよね。生き物の中で。ビジネスなんて、お互いの腹の探り合いですものね」
「僕とのデートも、腹の探りあいとか思っていませんか?」

眼鏡を中指で押し上げて、チラリ、と坂口さんはこっちを見る。





もしかして、鎌をかけられている?






ええい、本音を言っちゃえ!
「今までネットで会った人たちが、結構クセのある人ばっかりだったんで、正直あまり期待していません」
「そうでしたか」
坂口さんは、キュッと口角を結ぶとそう呟く。


ああ、もう出会い求めて必死になってるモテないかわいそうな淫乱女とか思われちゃったかな。
でも、もうどうにでもなれ!だ。


「例えばどんな?」
至極真面目に、坂口さんは訊ねる。
「えーと、ポルノのスカウトマンでしょ、彼女持ちの男でしょ、やりたいだけの種馬マンでしょ、プロフィールの写真と全然ちがうとっつあん坊やでしょ、で、この間最後にデートした男は真性のマゾでした」
「ぷっ」
運転中の坂口さんが突然吹き出す。
「ははは、面白いですね。小俣さんは。良い経験していらっしゃるようだ」
「よく、面白いとは言われます...。ただ、これらが良い経験かどうかは分かりませんけど...」
「良い経験ですよ。だってでなければ人間の直感や感性は磨かれませんからね。それに、ポルノのスカウトマンやとっつあん坊ややマゾの男達と会うという経験が無ければ、僕との出会いも無いですからね
あ。
思わず顔を上げる。

この人、受け入れてくれてる?

「ベイブリッジが見えてきました」
顎をしゃくって前を示す。
「僕は、久々のデートなんですよ。最後まで付き合っていただけたら光栄です」
坂口さんはそう言って、優しげに微笑んだ。




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