後ろの蕾を舐められるなんて、すっごい恥ずかしい行為なのに、
気づいたら羞恥心もなく喘いでいる自分がいた。
「んんっ…クッ…。」
花弁をなぞっていた一馬の指があたしの蜜壺につぷりと入れられた。
そのまま荒々しく奥へゆっくり入っていく。
「はっ…やん!!」
思わず、キュッと力を込めて一馬の指を締め付けてしまう。
一馬の指はあたしの中で円を描くようにかき回された。
「あ…あんん…ふっ…。」
もじもじと、お尻を動かす。
なのに指は執拗にあたしの蜜をかき混ぜた。
「そろそろ、いいだろう。」
小さく呟いた一馬は、顔と指をあたしのお尻の谷間から離した。
体を起こしてそのまま熱い塊をあたしの入り口に宛がう。
「用意はいいな?」
「…うん。」
熱くて丸いモノが、微かに蜜の滴る壺に埋め込まれた。
「あ…。」
と、その時。
異変が起きた。
言葉では説明できない。
息が苦しくて、目の前が真っ暗になった。
苦しい。
体中が、熱い。
死ぬほど熱い…。
丁度、酸欠状態…みたいな、そんな感じ。
「か…ず………。」
体全部がブルブルと痙攣を起こす。
やば…。息が…できな……。
体が…破裂…しそ……。
「明日香!!!!どうしたのだ、明日香!!!!」
ああ、一馬の声が聞こえる…。
たすけ………。
「行くな!!!」
がしっ、と腕が掴まれる。
思いっきり抱きしめられた。
あ、一馬がたすけてくれた…の?
ゼエゼエと肩で息をしながらも、あたしの意識はそこで途絶えた。
「だから言わねぇこっちゃねーんだよ。」
「お主が試せと言ったのであろう?」
「まさかお前が本気にするとは思ってなかったからな。可哀想に、この娘に無茶させやがって!!」
「こいつが言っている先の時代から来たという話が事実かどうか知りたかったのだ。だが…これで確かになったな。」
あれ?
会話が聞こえる。
誰かいるのかな?
「かず…ま?…誰か居るの??」
あたしは、のっそりと体を起こした。
外はまだ暗い。
夜は更けてないみたい…。
「イタタタタ…。」
体中が変な感じに痺れてる。
「起きたのか!!」
囲炉裏を囲んでいた一馬がこちらに向き直った。
気のせいか、ちょっと心配そうな顔をしてる。
「気を失ったまま一刻ほど起きなかったので心配したぞ。大丈夫であったか!!??」
大丈夫?
え?
……ってどういう事?
そういえばあたしさっきまで一馬と……。
「ハッ。」
恐る恐る視線を落とす。
「きゃあぁぁぁ~~~~っ!!!」
あたし裸じゃ~ん!!!
しかも胸丸見えで……。
ガバッと布団を引き上げて胸を隠す。
顔はきっと真っ赤だ。
「どどどどうなってんの?」
あたしにはわけわかめ状態だった。
一馬はあたしの傍まで来て胡坐をかく。
「まず、お前に謝らなければならぬ。実はお前の、先の時代から来たという話をずっと疑っていた。だが、これで多少なりとも信用出来るようになった。」
「はあ?」
何言ってんの?
っつーか説明した筈だよね?
信じてなかった…の?
茫然としているあたしの視界にもう一人の人物が映った。
つるッぱげででっかい図体の、お坊さんみたいな格好している青年だった。
青年は愛嬌のある顔で一馬の短くて不器用な言葉を付け足すかように説明する。
「つまりだな、一馬はお嬢さんの話が本当かどうか知りたかった。今日、果し合いの前にこいつが俺んとこの寺に来たもんだからちょっくら話をしたんだ。んで、お嬢さんの話を聞いた。あ、俺はこいつとはいわゆる幼馴染の腐れ縁でね、道弦というんだ。まあ、俺の事はいいとして……。常識で考えりゃあ先の時代の者が今の時代の者と交わったらどうなると思う?子でも孕んだりしたら歴史が滅茶苦茶になっちまうだろう?まずその前に先の時代から来た女とやらと交わる事が出来るのか。その話が本当か俺が証明して来いって言ったら、この男本当に試したらしくって、さっき血相変えて俺ン所に来たって訳。なんせお嬢さんの体が一瞬消えかけたらしい。」
「………はぁ?」
ちょっと待って。
あたし今起きたばっかで頭が働いてないみたい。
でも、何て言った?
あたしの体が消えかかったって???
困った顔をしているあたしを見て道弦さんはそうだなぁ、と呟きながら続けた。
「分かりやすく言うとだな、%#○の時一馬の○#*@をお嬢さんの&%$に☆◎#&としたらだな…って、おいおい!!!!」
一馬の白銀の冷たそうな刃が道弦さんの目と鼻の先で光っていた。
「もうよい。喋り過ぎだ、黙っていろ。」
少し顔を赤くしながら一馬は道弦さんの言葉を制した。
刀を鞘に戻して床に置く。
ゴホン、と咳払いしてあたしに向き直った。
「まあ、そういう事だ。お前を試す為とはいえ、苦しませた事は詫びる。」
一馬はあたしに頭を下げた。
えっ…じゃあ、あれって…。
あたし、ただ単に試されてただけなの?
なのにあたしったら結構その気になっちゃってて…。
……なんか弄ばれたみたいでショック……かも。
「だが、お前の体が一瞬消えかけたのには本当に驚いた。」
切なそうな隻眼があたしの視線とぶつかる。
なんで…本気じゃなかったのにそんな表情するの…?
「体は大丈夫か?」
一馬はあたしの髪の毛を撫でる。優しさが辛い…。
「ちょっと痺れた感じ…。」
一馬の顔を見て、胸が、きゅんとした。
な、何あたし乙女チックでセンチメンタルな気分になってんのさっ。
「だああああああ!!!!!!!」
あたしは気合の掛け声をかける。
「…大丈夫か?気を違ったか??」
心配そうに顔を覗き込む一馬の後ろではっはっはと道弦さんは笑っている。
「平気平気!!なんかちょっとストレス解消。ははははっ。」
でも、一馬とならやっていいかもとか思ってたのは確かじゃん。
中●生日記の純情ティーンネイジャーの生徒じゃぁあるまいし、
こんな事で悩んであたしったら…。
はははは。
「すと…れす?何だそれは?やはり頭をどうかしたようだな。ああ、それは元からだが…兎に角俺がついていてやるから今夜は体を休めて寝ろ。」
一馬はあたしを寝かしつけると、再び道弦さんに向き直った。
あたしは、ぼんやりと朽ちかけた古汚い天井を見つめながら考えた。
一馬は、あの時あたしの体が消えかけた、って言ってた。
それは…元の時代に帰れるって事?
それとも、あたしの存在自体がこの世の中から消えてなくなっちゃうって事なのかな?
あの時……。
ボッとあたしの顔が真っ赤になる。
みみみ見ちゃったし、見られちゃった。
それに、触らせちゃったし、それ以上の事もされたし、エッチな声で喘いじゃったし……。
ちらり、と背を向けている一馬に目をやる。
道弦さんと酒を酌み交わして飲んでいる一馬の様子はいつもと全然変わらなかった。
なんでこいつはこんな普通にしてるわけ?
あたしなんて思い出しただけで…。
ぼぼぼっと顔が真っ赤に火照る。
「なんかやっぱ腹立つ。」
あたしは小さく呟くと、顔が見られないように寝返りを打った。
古いけど暖かい布団があたしを優しく包んでくれた。
「まさかお前の顔が青くなる所を死ぬ前に拝む事ができるなんてなぁ。」
はっはっは、と巨体坊主は豪快に体を揺らしながら笑う。
「そんなに可笑しいか。お前がやれと言った事を実行したまでだ。
それに、お前もあの場にいれば度肝を抜かされていたぞ。」
至極真面目な顔で一馬は杯を口に運ぶ。
「いやいや、他人の色事を覗く趣味はねぇよ。髪が馬みてぇな色だし突然叫んだりと少々変わってはいるが、いい女だな。抱けないなんてもったいねぇ話だ。ま、お前は昔っからそういう男女の戯事に関しては結構割り切れるみたいだがな。」
「………そうでもないぞ。」
無表情で呟く一馬を見やりほーう、と垂れ気味の両眉をあげて唸る。
「お前が珍しいな。武者修行とやらで長い間女を抱いてないのが祟ったか?ふんっ。まあいいけどよ、それより……。」
空になった杯に酒を汲みながら、道弦は体を寄せて声を潜めた。
「今回中山流の田代与太郎に勝った事でお前の名は全国に知れ渡るだろうが…どこかの藩に仕官するつもりはねぇのか?」
一馬は仕官、と言う言葉を聞いてピクリ、と酒を飲みかけたまま動きを止める。
「幾つか話はあるが…。」
何事もなかったかのようにグイッと飲み干すと、杯を置いた。
「朧月藩の藩主が、俺を神雷流の剣術お披露目という名目で城に呼んで来た。何処かの誰かに仕える気は更々無いが、今回は藩主直々の要望らしく行くべきかどうか迷っておる。…道弦、お前はどう思う?」
道弦も一気に飲み干して杯を置いた。
よいしょ、と巨体を起こした。
「さあな。それはお前の考える事だ。幕府の為に人生を捧げるもよし。
己の信念に基づいてひたすら剣の道を追及するもよし。」
一馬は苦笑しながら道弦を顧みる。
「お前…俺と大して歳が変わらんのに悟ったような口をきくな。」
道弦は身支度を整えながら、横目で部屋の隅で寝ている明日香に視線を送る。
「物心ついた時から仏さんに仕えてるんだから当たり前だ。格の違いだよ、格の。で、この娘さんの事はどうするんだ?このままここに置いとくのか?」
「それは…分からん。」
「なんだか久々に面白れぇ事が起きそうだな。ま、また何かあったら俺んとこに来いや。」
意味有りげな笑みをこぼすとそう言い残して、巨体坊主はのそのそと戸口から出て行った。
「寝たふりをするのはよせ。」
ギクッ!!!
ば、ばれた?
「お前がずっと聞き耳を立てていた事くらい分からんでどうする。」
気づいてたならそのままそっとそっとしてくれって感じ。
「…だってなかなか寝付けないんだもーん。」
あたしは、一馬に背を向けたまま答える。
「…悪かった。」
えっ?
なになに突然??
「…先程の事でお前を傷つけたのなら謝る。あれは、ただの戯れと思って忘れてくれ。」
静かな声が狭い小屋の中に響く。
戯れ…かあ。
あたしの方は結構本気だったなんて、言えない…。
「う、ううん、別にいいよっ。これであたしが元居た時代に帰れるかもしれないって分かったし。」
シーン。
返事がない。あれっ?
顔を見たいけど、今寝返り打ったらなんかちょっとワザとらしいし。
どうしよう…何か喋った方がいいのかな?
とか思ってたら、一馬がちょっと間をおいて口を開いた。
「…お前は元居た所に帰りたいと思っているのだったな。」
がさっという音が聞こえて振り向いたら、一馬は刀を持って戸口に向かっていた。
「お前が苦しむ所を見たくは無いが、あれが本当にお前の元居た時代に帰る方法なのであれば、いつでも言え。手伝ってやる。よいな。」
一馬がガラっと戸を開けると、冷たい夜風が吹き込んできた。
「もう夜明けが近い。お前の一日は長かったのだから明日はゆっくり休め。俺は酔いを冷ましに素振りでもしてくる。」
そう言って真冬だっつーのに、一馬は薄着のまま外に行ってしまった。
そのうち、あたしもうとうとし始めて気づいたら深い眠りに落ちていた。