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未年の朝 2-3    07.31.2007


 今回の視察団は、宣教師のサンチェスさん、同行者の商人数名と、あっちの通訳、隣の海山藩の付添い人が数名。
この間会ったドミンゴだかフラミンゴだかってピエロの格好した(あたし視点)太鼓ッ腹で赤毛の商人は現地(つまり、銀山ね)に居るから来ないって情報はキャッチした。

この時代通訳はドミンゴって人が居ない場合は
スペイン語→オランダ語→日本語
なーんて面倒くさーい事やってるみたい。

あたしは、朧月城の中で政輝いわく『一番豪勢な客間』で南蛮の客人をもてなす為、普段じゃ到底着られないよーな、超重たいゴージャスな着物に着替えさせられた。
白粉や紅......いわゆるゲイシャ風メーキャップまで施されて、モノホンの舞妓やら芸姑さんやらのお姉さま方に紛れ、大事な客人の到着を部屋の隅っこにずらーーっと並んで待っている。
明日香さん、大へんしーーーーんっ!!!(←バカ)

部屋の中央には客の人数分らしき食べ物とお酒が載った盆が置いてある。

ってか、着物重いし、メークは顔がつっぱるし。

「私めがお助けいたしますので、ご安心下さい」
あたしの隣に座っていた芸者さんが、そっと耳打ちしてきた。
「え?」
ふと横を見ると、あたしの時代でもバリバリモテそうな目鼻立ちの整ったきれいなお姉さんと目が合った。
「矢絣(やがすり)と申します。政輝様の命で参りました。ここでは寧々とおよびください」
矢絣......さん?
えと、昨日の男の人は「絣」さんでぇ......。
もしかして、もしかする?
「明日からは、双子の兄の絣が明日香様のお供を致します」

やっぱ、兄妹(しかも双子!)だった!!!
この兄妹、一体何者なんだろ?
とか、お隣のきれーなお姉さんをレズビアンちっくに眺めていたら、
「お客人のおな~~~~り~~~~」
との一言が。
皆一斉に、大奥さながら、
「ははあ~~~~~!!」
と平伏する。
あたしもつられて、ははあ~~。

ドスドスと畳を踏む音。
長い部屋を横切って客達は皆指定されたお盆の前に座る。
全員が着席したところで、あたし達は面を上げることが許された。
そして近場に座っているお客様の横にそそくさと進み出る。
あたしも皆のマネして、誰かさんの隣に座る。

へえ~~。
前回はドミンゴって赤ら顔のおっさん見たけど、今回また改めてその『南蛮の客人達』を観察する。
部屋の奥......つまりあたしの傍に居る人は、歴史の授業で習った宣教師のザビエルクリソツなカッコしている。
あまり目立たない黒い毛に、大きい鉤鼻、30代...か40代。中肉中背の男の人。

じいいぃぃぃぃぃーーーっと。

ザビエル又は波平ちっくに剃ってある頭のてっぺんに目が......。
あ、波平は一本へにょ毛が生えてたっけ?

矢絣...じゃない、寧々さんの隣は商人らしき人。
あたしの前に座っている人も、多分商人なのかな。
と、思ってチラッと見ると。

あ。
目が合っちゃったよ。
っていうか、あれ???

このひと。
濃い青色の目をしてる。

「コンニチワ」
杯を口に持っていき、その男はあたしにニッコリと微笑みかける。
だけど、何かがゾクッてする、冷たい笑み。
「こ、こんにちわ」
他に4~5人居る他の南蛮人と違って一人だけ......ハチミツみたいな長い金髪を一つに束ねていて、あのヒラヒラ襟+提灯パンツみたいなド派手な格好じゃなくて、これまた一人だけ着物を着ている。
『面白い髪の色ですね』
「け、えぇ??」
「〇×&*$@~~~」
「娘、奇抜な髪の色じゃ、とそこの御仁が申しておる」
「あたし?」
スペイン語→オランダ語→日本語で、やや間遅れして通訳される。
ふう~~~っ。
やばいやばい。
スペイン語で即答しそうになったよ。
『この国では見かけない色ですね』
「&%#$@!*~~~」
「何故ゆえそのような色をしておるのか」
疑問系に変化しちゃってるし。
通訳いいの?そんなんで?
「あ、あのー、産まれた時からこんな色で...」
うっそーーーーーーーっ。
美容院で一回1万円かけたカラーリングに決まってるじゃない!
「&@$!%*~~~」
『家族代々このような髪だと』
をいをい!!
そんな事言ってないっつの!!!
『南蛮人の血が流れているのかもしれませんね』
ディープブルーの瞳を細めて、独り言のようにその人は呟いた。
「こちらは、商人のろぺす殿。明日香殿の横がさんちぇえす殿。このお二人が軸となっておられるそうです」
矢絣さんが小声で素早く解説。

スペイン人って、原住民が侵略されたメキシコ人と違って、まあ白人の国だけど、一応ラテン系......じゃなかったっけ?
それにしてもこのロペスって人......なんて言うんだろ。
北欧系?
ゲルマン系?
って感じ。
多分この時代の人には区別できないんだろうけど。

あたしのお隣の宣教師のサンチェスさんは、あたしがお酒をすすめても一口も口にしないし、とってもシャイ.........てか、この場がとっても嫌そう。
まあ、聖職者だしね。

そうこう思っているうちに、琵琶だの何だのって楽器を持った芸者たち(って、あたしも一応ゲイシャの一人だけど)が歌を歌って踊りだした。

あたしはじっと、南蛮の客人たちの会話に耳を傾ける。
『この国の女はサルのような顔ばかりだな』
なんですってぇぇぇ。
あんたに言われたく無いよ、胸毛もじゃもじゃゴリラヤロウ!
『いや、俺の好みもいるぜ』
あ、この男矢絣さんの事、鼻の下伸ばしながら見てるし。
ヨダレ垂れてるよ、おっさん!
『酒と女を持って帰るか』
お持ち帰りは、あたしと矢絣さん以外にしてね。
『ああ、採った銀と一緒に......』
『パンチョ!』
突然青い瞳のロペスとか言う人が声を張り上げた。
その鶴の一声で、大の男達が一斉に静まる。
『サンチェス、貴方もそろそろ「おやすみ」になられた方が宜しいのではないですか?』
杯を口に運びながら、ロペスがサンチェスに冷たく声をかける。
何、この緊張感……ってか、気まずさ。
あたしの隣の宣教師さんは始終無口だったけど、
『ええ、そうします』
と小さく頷いて、ヨロヨロと立ち上がる。

宣教師のサンチェスさんが従者と共に部屋を出て行った後。
ロペスさんが小声で
『気の小さい男だ』
と呟いたように聞こえた。





 「一馬様、わたくし今宵はとことんお付き合いいたします」
一馬を取り巻いていた女達の中でも一際美しい酒盛り女が最後まで一馬の酌をしていた。
誘惑しろとでも命をうけたのか、着物の襟元を下げ、白いうなじと首を惜しげもなく晒している。

あのじゃじゃ馬のおかげで多少の理性を保てるようになったのだろうか。
この婀娜めいた女を前にしても、ちっとも食指が動かない。

いや。
政輝殿にお目通し願うまでは、酔うも酔えなかった。

「あつっ!」
ガシャンっと陶磁器の割れる音。
そして、湯気の出ている液体が、その女の足元で飛び散る。
しなだれかかった女の肩を抱えて支えながらも、一馬はその行為がやけに手馴れているように思え、僅かながら眉をひそめた。
「わたくしったら......ああ、どうしましょう」
言いながらも、手を一馬の首に回してくる。

............成る程。

一馬はそのまま女を押し倒した。

「.........ぁあ」
首筋に唇を押し付け、女の着物の合わせを広げる。
豊満な乳房がその間からこぼれ出た。

自身の体で女の体を拘束し自由を奪い、片手で熟れた果実のように揺れている白い胸を揉みしだく。
喉元に唇を押し当てながら、反対の手を艶やかな髪の中に差し入れる。

これだな。
まさぐり当てた物を一気に引き抜いた。

刹那。
ふわり、と女の髪が舞い、焚きこめていた香の香りが広がる。

「政輝の居場所を言え。お前が素人ではない事は気づいていた」
女の喉もとに光る簪。
いや、簪の形をした、小刀。

「くっ.........!」
目にも留まらぬ速さと身軽さで、女は一馬から飛びのく。
半裸を腕で覆い隠しながら、肩で息をしていた。
「ま、政輝様はあなた様がわたくしを抱くまでお会いになりませぬ」
一馬は目を細めた。
「ほう?これは若殿の新しいお遊びか?」
「そんな事!ただ、わたくしのお役目はあなた様と床を共にする事。さもなければ、わたくしの命も、あなた様の大事なお方のお命も無いかもしれませぬ」
一馬の独眼がキラリと光る。

「ならば.........」
一馬は静かに立ち上がり、女に詰め寄る。

手を伸ばし、裸の白い肩を掴んで引き寄せた。
女をそのまま壁に押し付ける。
彼の硬い身体が女のしなやかなそれに重なった。

「お前を抱くまでだ」



二つの影が、一つに重なった。


 
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