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九条夕雲 (裏)    07.14.2007
 夢見ごこちなあたしの顔に、優しい吐息がかかった。

暖かい口付けだけでは物足りなくって。

接吻される度、意思に反して体の火照りが増す。

あたしはどんどん貪欲になっていって…。

「…もっと…。」

と首に手を廻してその人を引き寄せた。

一瞬その人はビクッと体を震わせたけれど、やめたりなんてしなかった。

優しい口付けは何度も降って来る。

あたしはそのままその人の上に覆い被さるような格好になった。

ちょっとばかり大胆に、その人の白いうなじや着物から覗いた胸元に唇を這わせる。

「木蘭…やめっ……。」

苦しそうな声が聞こえたけれど、唇で塞いで彼の抗議を止める。

そのままその人のすらりとした体を愛撫した。

「はっ…なっ…何を……っっっ!!!」

最初は胸を。

白い胸の頂を、指で軽く擦ったり抓んだりして刺激を与える。

「…っ…。」

彼の口から快感の喘ぎが零れ出ると、あたしは手を着物の奥深くに侵入させ、わき腹に移動した。

敏感な所を弄って擽る。

「もく…蘭…あ…やめろ…!!!」

次は、凹んだお腹の中心を。

内腿の探索を終えると、あたしは 一番最後の目的地へと手を伸ばした…。

 

「!!!!!!」

声にならない叫び声が出た。

吃驚したのもあって、彼のそこを確認するかの如く強く弄った。

どんなに揉みしだいても、扱き上げても、着物の下から褌越しに触れたそれは、全然変化をしていなくて。

「…何で…??」

あたしが手を止めたので、僅かに顔を桜色に蒸気させながら彼は半身を起こした。

怒っているみたい。

整った顔の、薄い瞳に冷たい光を宿しながらあたしの手首を強く握る。

爪が食い込む。

「だから言ったであろう?私には妻を娶る資格が無いと…。」

あたしを睨むように見据える茶色い双眸は、泣き出しそうな潤みを含んでいた。

でも掴んでいる手にはどんどん力が入っていって。

「痛っ…。」

あたしが苦痛で顔を顰めると、彼はハッとして手首を離した。

「…悪かった。」

俯いた彼は、少し間をあけて再び顔を上げた。

「お前は私を嫌うか?」

花のような綺麗な唇を、血が滲み出そうなくらいかみ締めて切ない声であたしに問うてきた。

ドキンッ。

胸が一つ大きく鳴った。

「嫌うなんて…そんな。…嫌わ…ない。そんな事で嫌えるはず無いよ。九条様は九条様だから…。」

あたしは頭を振りながら、彼を見る。

何でだかわからないけれど、あたしの方が泣いていた。

その人は、フッと表情を和ませて。

そして再びさっとあたしの手を取った。

今度は優しく。

その手を、彼の心の臓の上に置く。

ドクン、ドクンドクンという鼓動と共に、あたしの中に何かが送られてきた。

それは、水面に映る水鏡の如くゆらゆらと、曖昧な映像で。

「えっ…。」

そして、全てを悟った。


 

それは、彼の複雑な生い立ちと孤独な半生だった。

彼が。

徳川家康様の孫を娶りながら帝が血の繋がる妹と通じて出来た、血の濃い不義の隠し子であるという事も。

その濃い血に呪われ、性的に障害を抱いて生きてきたという悲しい半生も。

養子に出された後も、養子先の九条家は帝から押し付けられた責任を疎ましいと厭い、妖しい力を持つ彼を恐ろしく忌まわしいと思いながら育てた事も。

幕府に彼の存在…真の生い立ちを知られたら、朝廷は幕府によって潰されるかもしれないだろうという驚くべき事実も。

 

「残念な事に、私には私の人生を見る力が無い。だが、私は自分がどんな生い立ちだったのかは知っているつもりだ。……こんな私でもお前は厭わないか?」

彼も綺麗な頬に一つ涙を溢しながら、あたしの手を握り続けていた。

「もちろんっ。そっちこそ、こんな遊女なんて身分のあたしでよければねっ。」

あたしは、化粧の崩れた滅茶苦茶な顔で微笑んだ。

「……そうか、良かった。」

滅多に笑わない彼が、笑顔を見せた。

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