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米屋十兵衛    07.14.2007
米屋十兵衛



→さっそく読んでみます??



 

 

 「お前の綺麗な顔を俺の色で染めたかった。」

悪びれもなくハハハと笑うこの男。
顔を洗ったあたしは、目の前の男を睨みつけた。
米屋十兵衛なんていかにも商人らしい名前の彼はそんな名前の持ち主とは思えないほど、不思議な美貌の若旦那だ。

彼の実家は大阪から来た江戸でも有名な酒造の老舗で、遊郭に来るたび散財を惜しまないいわゆる豪商の嫡男だった。
主である父親が、北方の蝦夷地に住んでいた異国の女を買い取って妾にして出来た子だと自分で言っていた。
だから彼は透き通った肌と、巷では珍しい亜麻色の瞳と髪の毛を持っていて。
彼の実の母親は彼を生んですぐに亡くなってしまったらしいけど、幸いなことに本妻さんに子供が出来なくて、実の子の様に可愛がられたそうな。

そして、散々甘やかされてこんな助平男に育ってしまったらしい。

「それは、俺に対してしつれーじゃねぇか?」
さっきからずう~っとあたしの隣で、あたしのうなじのほつれ髪を弄っているこの男。
色っぽいと勘違いしているのか、袂を広げてド派手な金色の虎模様の入った着物を着崩している。
その体には嫌というほど香油をつけているらしくって、こいつが動く度にぷんぷんぷんぷん匂いが漂って来る。
「ああ~~もう、忌々しい!!!行為が終わったらさっさと帰ってよ!!!」

あたしが振り払おうとした手を、こいつはいとも簡単に掴んでしまった。

「い・や・だ・ね!!それが客に対して言う言葉かよ??あともう三発くらいしねぇと払う金の元がとれねーよ。最近お前はつめたいからよー。俺が浮気して梅山の他の女に手ぇ出すと怒る癖に、勝手なもんだよな~っ。」

この男は。

黙っていればとてつもない美貌の持ち主なのに、その顔に合わない饒舌な口調と馴れ馴れしい喋り方でいつもあたしを苛々させていた。
「あんたね、浮気も何も、この間梅の屋のお鶴ちゃんと会ってたって新造が言って来たわよ。あ、誤解しないでね。あたしはあんたみたいな女好きの客は大っ嫌いだし、他の女の所に行ってくれたらあたしだって万々歳なんだから!!」
あたしの言葉に十兵衛さんはニタニタしながら答える。
「へ~え、そうなのか。俺が浮気しても松田屋の木蘭さんは構わねーんだ?」
彼は掴んだあたしの腕を引き寄せて、半むき出し状態の胸の中に閉じ込めた。
「お前は浮気し放題なのに、いいご身分だな??」
「は?」
手で彼を押し退けようとしても、あたしを包んだ腕は力強くて放してくれない。
「お前に比べたら俺のなんて浮気にも入んねーよ。俺が身受けして自由にしてやるっつってんのに、意地張って聞かねーだろ?そこまでして他の男とやり続けてーのかよ??」

「なっ!!!」

何その言い方!!!激ムカだわ!!!
と言おうとして彼の胸から顔を上げると。

いつものふざけた彼とは大違いの、真面目くさった表情をした十兵衛さんの真摯な視線とぶつかった。

なに、その顔…?

ちょ、調子狂うじゃんか!!!!

「し、仕事だもん。しょうがないじゃないっ。それにね、あたしは誰にも頼りたくないの。自力でお金を返し終えるか、二十七で引退するかまでは一人で頑張るんだから!!!」
フンッとあたしは横を向く。

「一人で、ね。まあお前らしいっつたらお前らしいけどよ、そんな事言って年明け過ぎて貰い手が無くっても泣きつくなよ。俺は知らねーぜ?三十過ぎて現役なんて恥ずかしーよなぁ。」
亜麻色の髪の毛を掻き上げながらフフンッとせせら笑う。

ガーッ!!!ムカつく!!!

「人の心配より自分の心配しなさいよっ。女遊びも過ぎるといつか痛い目にあうんだからねっ。」
横を向いたまま言い放ったあたしの顎に、グッと手が置かれた。

そのまま、唇が重なった。
荒々しく角度を変えて、彼の舌が深々と侵入して来る。


そのままあたし達は二回戦に突入した。

 


 「美味しかったぜ。」

長い夜を経て、や~っとあたしの体が開放された。
あたしは疲労でもう腰が立たなかった。
なのに彼はフラリと身軽に立ち上がって、身支度を始める。

っつーか…。

なななな、何なのこの男は!!!

「そんな寂しそうな顔すんな。また明日遊びに来てやるから。それまで体休ませとけっ。なっ?」
ド派手な着物に、これまたド派手な羽織を羽織ると十兵衛さんはチラリと後ろを振り向いて、まだ布団の上のあたしに声をかけた。

はっ!?

明日って…。
冗談じゃない、こんな事毎日してたら体が持たないわ!!!!!

「それじゃ、また明日♪」
と元気にあたしに一声かけ、悠然と立ち去る奴に向かって。

「に、に、二度と来るな、好色絶倫バカ男ぉぉぉ~~~~~!!!!!!!!」

との、あたしの叫びが揚屋中に響きましたとさ。



ちゃんちゃん♪


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