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ホームカミング    05.20.2007
 アメリカの大学を無事卒業して東京で職を得て以来、同じ日本ながらも滅多に実家には戻っていなかった。

帰ったとしても、日帰りか、長くて1泊のみ。

まさか自分が、ゴールデンウィークの東京駅の雑踏の中を、ボストンバックかついでかき分けていくなんて、全く想像していなかった。

いつもなら、時間があればヨーロッパだとか、アメリカ国内を仕事がてら旅するのに、今年は何故か両親の住んでいる実家に行こうと決心した。

実家といっても...。あたしが14歳になった時、急に技術者の父親が本社からアメリカより帰国命...というより、左遷命令が下って地方の子会社の責任者に任命された時以来住んでいる家なのだが...。


新幹線で、数時間。
プラス、特急、各駅の乗り継ぎ含め数時間。
駅からバスで30分。
「海外行くより遠い~~~~~~~」
一時間に3本、しかも各駅停車しか停まらないような片田舎の駅に、やっと到着する。
一応、隣町の住人も利用するちーーーーーーーーーっさな町自慢の商店街が、目の前にある。
もうここ数年、過疎化が進んでいる以外、何も変わっていない。


「お母さん、迎えに来るって言ってたのに居ないし。」
時間にルーズな母親の事だ。近所のオバサン達とぺちゃくちゃ世間話でもして、娘の帰郷忘れたか。
ちらり、と腕時計に目をやる。
午後4時45分。

母親の携帯に電話してみたが、直行で留守電になった。
仕方が無いので、バスに乗ろうと(こんな田舎ではタクシーは無い...悲しい事に)、バス停のある駅の外れまで歩いて行き、丁度停車していたバスにそのまま乗り込もうとする。

と、その時。
待ったああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!
と、後ろから耳を割るような大声が聞こえた。
だんだん、救急車のサイレンのごとく、近づいてくる。

シュッ、と風を感じたかなー、と思った瞬間

キキキィーーーーーッ。

と真横でチャリがとまる。
「ギリギリセーーーーーフッ!」

はあはあと息を切らせながら、
『りんどう高校水泳部』
と書かれたジャージを着た坊主頭の男の子が自転車から転がり降りてきた。
立ったまま、両膝に両手をついて肩で息をしている。

「20分で着いたぜぃ」
「あれ?お母さんは?何でタロなの?」
タロこと山田太郎なんて超平凡な名前の少年は、弾かれたように顔を上げて、まじまじとあたしの顔を食い入るように見入った。

坊主頭ながらも、褐色の肌、前見た時よりも男らしくなった顎周りや人懐っこい黒目がちでちょっと垂れたワンコみたいな目を細めながら、満面の笑みを浮かべる。
「俺が隊長の送迎サービス名乗りでましたぁぁぁーーー!」
「隊長って、何だ?サービスって、コレか?」
あたしは、錆付いて前輪だけくるくる風車のように回っている、元気なく車道に横たわっている使い古された自転車を指差した。
「そうだよ、出張出血大サービスぅ!」
「違うだろ!」
ボコ、と坊主頭を殴りつける。

嗚呼、懐かしひこの感じ......。


この、実家の隣の中華料理店の家の一人息子は、あたしが14の時親の都合で帰国してこの地方の田舎町に引っ越してきた当時、まだ朝顔の蕾みたいなチン〇しか持っていない、3頭身の小さな子供だった。
よくピーピー泣いて、人見知り激しくて、でもお守りをしていたあたしによく懐いていた。

「じゃあ、隊長行きますよー。」
タロはそう言って、ひょいとあたしのボストンバックをグニャグニャになった籠に入れる。
この子が立ち上がった瞬間、塩素と体臭の混じった男臭い匂いが鼻を掠った。

あれ、あたしの頭一個分
「でっかくなった」
「当ったり前じゃ。成長期だぞ、俺~」
タロは自転車の椅子に跨って、木偶の坊のようにその場にぼんやり立ちつくすあたしに、手振りで後ろに座れと合図する。
「あんた、汗びっしょりじゃない。......どこにしがみつけと?」
タロの眉毛が困ったように八の字になり、「えっとー」と暫く考えながらポリポリと鼻を掻く。
「横座りしたらいいじゃんっ」
と、もっともらしい答えをだす。
「でも、そんなに肌恋しいならタロちんにしがみついてもいいよぅーーー♪」
あたしが後ろに乗ったのを確認すると、タロはペダルに足をかける。
「結構でございます。安全運転してよね」
「隊長、らじゃあーーーーーー!無敵の太郎丸発車いたしまーす」
そういうなり、チリリン♪とベルを鳴らして走り出した。



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